映画『四畳半タイムマシンブルース』
【10月6日 記】 映画『四畳半タイムマシンブルース』を観てきた。
『四畳半神話大系』と『サマータイムマシン・ブルース』のコラボ・アニメなるものがあることを、何か月か前にポスターを見て知った。それは観たいと思った。
僕は『四畳半神話大系』は読んでいないが、デビュー作の『太陽の塔』以来、森見登美彦の小説は何作か読んでいる。アニメ映画になった『夜は短し歩けよ乙女』も観ている。
そして、ヨーロッパ企画の舞台は未だ観たことがないのだが、2005年に本広克行監督で映画化された『サマータイムマシン・ブルース』は WOWOW で観ている。
観ているとは言え、何を観ても忘れてしまう僕のことだから、上野樹里が出ていたということと、エアコンの壊れたリモコンの話だったことと、なんか『 バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいな話だったことと、この出演者の面々がそのままの役で映画『UDON』にカメオ出演していたことぐらいしか記憶に残っていない。
ま、そのほうが今日の映画を楽しめたとも言えるのであるが、じゃあ今日の映画を観て、「あ、そうだった、そうだった」と思い出したかと言うと、そういうこともほとんどない(笑)
森見登美彦とヨーロッパ企画の上田誠はこれまでにも接点が多く、まず2人とも 1979年生まれで、森見は奈良出身の京大卒、上田は京都出身である。森見の『四畳半神話大系』が TVアニメ化されたときに脚本を書いていたのが上田である。そして、『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明監督)もまた上田脚本である。
この映画は、『サマータイムマシン・ブルース』を下敷きにしてアニメ化された『四畳半神話大系』の面々が登場する小説を書きたい、と森見が上田に申し入れてできあがった小説を、上田が脚色して映画化したものである。
監督は夏目真悟という人で、この人はアニメ『四畳半神話大系』にも『夜は短し歩けよ乙女』にも参加していた人なのだそうである。
僕は TVアニメは全く観ていなかったのだが、この絵は却々素敵だ。写実とデフォルメ、省略とデザイン化のバランスが絶妙である。アングルが面白い。脚本がしっかりしているからテンポも軽快である。
人物ではひとりだけバケモノみたいな造形の小津が良い。そして、決して美女には描かれていないのだが、明石さんがやっぱり魅力的である。「私」が惹かれるのも無理はない。
そして、森見登美彦の文体を見事に活かした(というか、そのまま使ったというか)語り口が極めてユーモラスである。京大や京大生について明確なイメージを持っていれば持っているほど楽しめると思う。
話はよく練ってある。タイム・パラドックス理論としてどこまで正しいのかなんてことは僕には分からないが、面白いのは間違いない。人生の皮肉が明るく散りばめられている。
いやあ、面白かった。
奇しくも先週末に昔の仕事仲間と京都に行き、京大時計台下のレストランで食事をして、映画の中で彼らが打ち上げに行こうとしていた中華料理屋がある出町柳から叡電に乗って八瀬に行ってきたばかりなので、なんだか妙な絆を感じる。
ちなみに 45年前には時計台下に洒落たレストランなど存在しなかった。この作品の中の鴨川幽水荘も 25年後まで残っているとはとても思えないのだが(笑)
Comments