映画『野球部に花束を』
【8月16日 記】 映画『野球部に花束を』を観てきた。
映画館でこの映画の予告編を観たときには、よくもまあこんなつまらない映画を作ろうと思ったものだなあと思ったが、これが敬愛する飯塚健監督の作品(脚本も)だと知ると観ないわけには行かない。
それでもあまり期待しないで観に行ったのだが、いや、こんなバカバカしい題材を全く上滑りすることなく最後まで構成し切った飯塚健って、本当に才能溢れる人なんだなあと改めて感心した。
予告編だけ見ると結構滑っているように見えるので、かなり損していると思う。
予告編では現代に残っている理不尽な時代錯誤ワールドみたいな部分を前面に押し出しているが、この映画はもっと単純に「野球部あるある」を繋いでコント風のドラマにしたものだ。原作はクロマツテツロウの漫画。
で、本編内でもたびたび丸いワイプで元ロッテの里崎が登場して「野球部あるある」を短く語る。
丸坊主にしなければならないという制約があったためか、高校生役ではあまり顔の知れたタレントは出ていない。僕が最初から顔と名前が分かったのは駒木根隆介だけ。しかし、彼、もう不惑ですよ(笑)
主役・黒田を演じた醍醐虎汰朗は、『天気の子』の主人公だったと言われてもあれは声優だったし、2.5次元の『弱虫ペダル』でも主演だったらしいが僕は観ていないし…。
そして、黒羽麻璃央は後から「あ、あれは黒羽麻璃央だったのか!」という感じで、市川知宏は「なんか名前に記憶がある」程度である。みんな1年生役だが5人の平均年齢は約29歳!
そんな1年生部員たちが恐れをなす上級生役には、間違いなくわざとだが、とても高校生には見えないおっさんたちが多く扮していて、それでもなお迫力不足と考えたのか、「1年生にはこう見える」という設定では小沢仁志が出てくる。この辺の思いつきがおかしい。
そして、クレイジーな監督役を高嶋政宏がクレイジーに演じている。しかし、こいつが単にクレイジーなだけではなく、たまに人生の急所をついたような良いことを言うのがこの映画の良いところでもあり、逆に笑えるところでもある。
カメラも寄ったり引いたり、斜めから真上からと、結構凝った撮り方をしている。ドリーズームの手法で、手前のグローブを舐めて奥に黒田を映し、グローブの大きさを変えずに黒田のサイズを次第に小さくして行くシーンはまさに黒田の心象風景であり、面白かった。
早朝のグラウンドでひとり練習していた黒田の前にキャプテンの坂内(松本銀二)が現れるシーンでは、遠くにチームでランニングをしているどこかの部の掛け声が収められたりしているのも芸が細かく、とても良いシーンだったと思う。
結局は飯塚建の力量を再認識させられた作品だった。
爆笑には至らなかったが、何度か思わず笑ってしまった。良作コメディである。
あとはこの映画で理不尽なしごきが再評価されたりすることのないように祈るのみ。まあ、そんなことはないだろうけど(笑)
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