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Friday, August 12, 2022

映画『TANG タング』

【8月11日 記】 映画『TANG タング』を観てきた。

これまで『管制塔』を除く 14本の作品を観てきて、見慣れた三木孝浩監督の映画だと思っていたら、冒頭の、荷物運搬用のドローンが飛び交う街の俯瞰があまりにきれいで驚いた。──そうか、CG は白組がやっているのだ。

札幌空港や福岡空港、深圳の繁華街、そして宮古島の田舎道など、ものすごくきれいな画、すばらしい構図が多い。

しかし、それにしても三木監督はこの3年間で6本、コロナの影響で公開スケジュールが前後してたまたま重なってしまったということもあるかもしれないが、今年の7月8月で3本連続公開とは、なんという多作!

今回は原作がある。デボラ・インストールの『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。僕は読んでいないが、これは昨年の『夏への扉』を思い出させる。

しかし、どれほど原作に忠実なのかは分からないが、映画を観た限りでは、この話は『夏への扉』ほど複雑な話でもないし、SF の観点からしてもそれほど完成度の高いものではないように思える。

なんとなく設定がゆるく、特に武田鉄矢が演じたロボット科学者の部分が茶番っぽいのだが、まあ、その辺を狙った映画でもないのだろうから、それはそれで良いのかも知れない。

なにしろタングの容貌は多分 20世紀の人たちが頭で考えていたようなデザインだ。おまけに金属の角の部分が悉く錆びている。そのタングを白組が自在に動かしてとても可愛らしい画ができあがった。

さらに随所に挿入されるタング目線の映像が良い。三木監督はこういう撮り方が非常に巧いなあと思う。タングの目に映る人間たちの表情がとても良い。

思うにタングの身長をこの高さに設定したのは大正解だった。人間を見るときに必然的にちょっと上目遣いになる。二宮和也との2ショットの構図が絶妙に愛らしい。そして、タング目線の映像は逆に下から少し煽った構図になる。そこに映る人間たちのタングをいたわるような表情が的確に表される。

突然裏庭に現れたオンボロ・ロボットのタング。妻の絵美(満島ひかり)に言われて、健はタングを捨てに行くが、タングはすぐに健の後を追っかけてくるのでうまく行かない。

弁護士でバリバリ稼ぐ妻に対して、研修医時代の失敗から未だに医者として独り立ちできない健。そんな健が堪忍袋の緒が切れた絵美に追い出され、仕方なくタングと旅をするロード・ムービーであり、タングとの交流を通じて健が再生する話だ。

二宮和也は非常に安定した演技者だと思う。決して何にでもなれるというタイプではないが、しかし、何をやってもある程度のリアリティが出る。

この映画で素晴らしかったのは満島ひかりだった。久しぶりに彼女の演技力の真骨頂を見せてもらった気がする。

他にかまいたちの2人や、市川実日子、奈緒、京本大我、景井ひならを配し、随所で笑いを取りに行っていたのが印象的だった。

誰もが最後はハッピーエンドであることを分かって観るタイプの映画である。大きなどんでん返しも感動で泣ける最後もない。

「面白かった。良かったね」と言って観客が帰っていったらそれで良い映画なのではないだろうか。

エンディングにスチルをとっかえひっかえして、その後の2人の暮らしを描いていたのも微笑ましかった。

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