『日本語はこわくない』飯間浩明(書評)
【7月21日 記】 飯間浩明の著書を読むのは2冊目だが、今回この本を手に取ったのはタイトルが気になったからだ。はあ、そう来たか、と思った。
日本語はこわくない──僕は日本語が怖いなんてついぞ思ったことがない。日本語は、いや、言語というものは全てとても面白いと感じている。
もちろん僕も言い方を間違えてトラブルになったことは数え切れないくらいある。確かに口は災いの元だ。
しかし、それを言うなら、人間という誇り高い生き物は、ただ生きているだけで他の人間にとっては災いの元なのだから、そんなことを気に病んでも仕方がないと思っている。
などと考えながら、ふと思ったのは、しかし、国語学者の飯間浩明や国語オタクの僕らは面白いと思っていても、そうではない一般の人たちはひょっとしたら怖いと思っていて、それを知っている飯間浩明がこんなふうなタイトルで呼びかけたのかなあ、ということだ。
文中に「日常生活の中で、その動詞が何活用かなんて、ぱっと分かる人はごくわずかです」という記述があり、僕は「そうなのか!」と思った。うん、確かにそうかもしれないな。そして、そういう人たちは日本語を怖いと感じるのかもしれない。
でも、まあ、どっちにしても、あんまり構えないで流し読みしたら結構面白いんじゃないかな。
知っていること、分かっていることもたくさん書いてあって、それを再確認するのも楽しいし、たまに知らなかったことも書いてあって、そういう分類や分析に触れるのもめちゃくちゃ面白いと僕は思う。
著者自身も「人々が日本語を怖がるのは、ことばに顔を近づけすぎているからじゃないかという気もします」と書いている。そう、少し視線を遠ざけて流し読みすれば良いのである。
でなければこの本は、日本語が怖い人が真剣に読むとなおさら怖くなるのではないかと思う。それほど微に入り細を穿っており、僕はそこが読んでいて楽しいのだが、「これはそう言うのが正解なのか」「これは間違わないように憶えておかなければ」などといちいち思って読んでいると、そりゃあしんどいだろう。
僕の記憶にとりわけ残っているのは
「様」はそろそろ古語の仲間入り
よく「ご苦労さま」は目下に、「お疲れ様」は目上に使う、と言われます。これはべつに伝統的な区別ではなく、1990年代から見られる主張です。
「受付け」と「け」を1つ省略することもできますが、現在ではややマイナーな表記です。
などで、いずれも少し意外に感じた(つまり普段の僕の使い方や思いと少しずれている)部分である。
でも、ずれているのが分かるのがこれまた面白い。僕はそういう読み方をする。
そして、著者自身も、ひょっとしたらこの本で逆に怖がらせたかなという思いがあったのかもしれないが、最後になって、
どのことばが正しいかを決めるのは、結局、あなた自身です。
などと書いている。日本語を怖いと思っている人がこの一文を読んですんなり納得するのか逆に戸惑うのかは僕には分からない。だが、堅く考えないということは大切なことであると僕も思う。
筆者は、
対座している相手の言葉を聞いて「間違っているな」と思ったことはありません。私はむしろ、新しい言い方を聞くと喜ぶタイプの人間です。
と書いている。僕もそうである。むしろ日本語が少しずつ変わって行くのがとても面白いと感じている。
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Comments
ヤマエーさんこんにちは。
今日の記事を拝見し、思い出したことがあってヤマエーさん、ちょっとお聞かせください。
私がヤマエーさんのサイトにたどり着いたのは、もうかなり前に日本語関連の調べ物をしていた時です。同じころ読売テレビにいた飯間さんという方のサイトも訪れていて、一時はヤマエーさんと飯間さんを混同していた時期もありました。今日取り上げられた「飯間浩明」さんがその時の方だと思い込んでいたのですが、調べてみたら読売テレビにいたことはないようです。ただ、その頃読売テレビにいた辛坊治郎さんが「うちの局には飯間という日本語にうるさいやつがいて…」とおっしゃっていた記憶もあるのですが、ヤマエーさん何かご存じですか?すみません関係ないことで…
後、「お疲れ様」は目上の人に使ってはいけないと私は聞いておりましたが?
隠居生活はいかがですか?快適でありますように。
Posted by: 宮田収 | Saturday, July 23, 2022 08:12
> 宮田様
いつもどうも。残念ながら僕は営業・編成畑だったので、読売テレビでそういう仕事をしている人とは接点がありませんでした。飯間という名前にも記憶はありません(後に取締役になった飯森さんという人はいましたが)。
読売テレビには元アナウンサーで後に報道局に転じ、まさに「ことば」の専門家として活躍している道浦さんという人がいますね。直接の知り合いではないのですが、知り合いの知り合いなので、僕の facebook でもよくお見かけします。
この人は YTV のウェブ上で飯間浩明さんの著書をかなり取り上げていますが、それと混同されているということはないですかね?
いずれにしても、あまりお力になれず申し訳ありません。
Posted by: yama_eigh | Saturday, July 23, 2022 08:51
ヤマエーさん、ご回答ありがとうございます。その後追加で調べていたら、飯間さんのサイトに行き当たり(最初から行けよという話ですが)見覚えがあるTOPでした。でも読売TVの話は一切なく、どうやら私の記憶の中でコンタミを起こしていたようです。年は取りたくないですね。ちなみにサイトは以下の場所です。どうもお手数をおかけしました。
http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/index.htm
Posted by: 宮田収 | Sunday, July 24, 2022 08:16