映画『教育と愛国』
【7月9日 記】 映画『教育と愛国』を観てきた。
つい先日まで自分が所属していた会社のディレクターが撮った映画でありながら、別にドキュメンタリを毛嫌いしているわけではないのだが、僕が根っからのフィクション志向であるためにノンフィクションは後回しになり、ようやく今日観るに至った。
ちなみに僕は在職中に監督の斉加尚代さんとはひとことも喋ったことがない。いや、ひょっとしたら廊下ですれ違ったことさえない可能性だってある。
で、観た感想としては、ひとことで言って「げっそりした」という感じ。いや、このドキュメンタリの出来が悪くてげっそりしたのではない。ここに映し取られている日本のありさまを見てげっそりしたのである。
国や権力が力ずくで都合の悪いものを押し流していこうとする風潮。「反日」というレッテルさえ貼っておけば、それをどんな形で排斥しても良いと考えている輩。
しかも、安倍晋三元総理が射殺された翌日というタイミングで、この映画の中に何度も安倍が映っている。僕は安倍という政治家を微塵も評価していないが、しかし、その安倍が殺されたとなるとやっぱりそれもげっそりである。いや、げっそりどころではない。
それはこの映画で描かれている惨状の裏返しなのだろう。
インサート映像や BGM の使い方、狭い意味での編集(つまりは構成)とか、その辺りのドキュメンタリのテクニックについては僕はよく分からない(ちょっとわざとらしいかなと思った箇所もあったけど)。
ただ、このドキュメンタリはおかしなことを言う奴を黙らせようとは決してしていない。彼らにも自由に十全に話させている。かと言って、ペローンとした両論併記(それは知の営みではない)で終わったりもしていない。
その際どいところをするっとかき分けて、分け入っている感じがある。
斉加尚代監督がたまたま東京に来ていたとのことで、上映後急遽トーク・ショーが開かれた。トーク・ショーと言うよりむしろ独演会だったが、決して独善的になることもなく、とてもしっかりした挨拶をしていたので安心した。映画の内容が明快に補強された。
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