NHK BS4K 『雪国』
【5月13日 記】 NHK BS4K で録画しておいた『雪国』を観た。脚本は藤本有紀。
川端康成にも主演の高橋一生にもさしたる興味はない。ひたすら駒子役の奈緒が観たくて録画したのだ。奈緒はこのところ僕が一番推している女優である。
まず驚いたのは画の綺麗さ。いや、綺麗は綺麗なのだけれど、綺麗と言うよりもむしろ「リキ入ってるな!」という感じ。「4K だとこんな綺麗な映像をお見せできるんですよ!」とカメラマンが誇らしく語っている感じがある。
夜のシーンでの陰影のつけ方、画面の奥行きの出し方、等々。
最初のシーンで、書斎で仕事をしている島村(高橋一生)を女中が呼びに来る。手前に島村を置いて、奥のドアを開けて女中が顔を覗かす2ショットなのだが、2人の会話の間中、カメラの焦点はずっと女中に合っていて、島村はぼかしてある。島村の台詞の間もずっとそうなので少し驚いた。
ドラマを通してこんな風に被写界深度を浅くして(他のシーンでは無論手前ではなく奥がぼかしてあるのだが)見事な奥行きが出ている。
宿の浴場から帰ってきた島村が部屋に続く廊下の階段を上がろうとしたら、上に駒子が来て立っているシーンも凄かった。階段の下からあおった画なのだが、相当の角度がついていて、駒子の着物の裾が広がっていることもあって彼女が大きく、存在感たっぷりに映り、角度がきついのでその奥に映っているのは壁や襖ではなくて天井である。
他にも挙げればきりがないが、全般にコントラストが非常にくっきりしていて、どうよ、4K ってこんなに綺麗に映るんだよ、と言わんばかりにまざまさと見せつけてくれた。
先日観た『ふたりのウルトラマン』も 4K だったが、アーカイブ映像が多かったこともあるのか、あのドラマではそんなことは全く感じなかったな。
4K が登場した当初は、カメラがちょっと速く動くと、観ているほうは軽く乗り物酔いしたような感覚に襲われたものだが、技術の進歩で、今はカメラが動くとなんとも言えない趣を感じたりしてしまう。
で、やっぱり奈緒がすばらしい。
顔の造形だけの問題ではなく、表情や所作も含めてめちゃくちゃ愛らしくて、島村が駒子に夢中になるのもむべなるかなと思わせる説得力がある。かなり年長の島村に「あんた、もう東京に帰りな」などと言う、気の強いところもある芸者だが、こういう女に惚れてしまう男の心境はよく分かる。
一方で、なんで駒子は島村がそんなに好きなのか解せない部分もあったのだが、ま、恋とはそういうものだから仕方がない、と思って観ていたら、終盤で駒子の日記が出てきた辺りから、彼女の思いが痛く胸に突き刺さってきた。
良いドラマだった。
僕は川端康成って、多分短編を1つか2つ読んだだけだと思うのだが、はあ、あの白髪頭の作家はあんな顔してこんな世界を描いていたのか、という感じ(笑)
葉子役の森田望智も良かった。『全裸監督』の黒木香役以来一気に売れてきて嬉しく思っている。
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