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Tuesday, May 24, 2022

映画『バブル』

【5月24日 記】 映画『バブル』を観てきた。

僕はアニメに詳しいほうではないが、虚淵玄という名前は知っている。ま、読み方が難しいから憶えていただけかもしれないが(笑)

その虚淵玄が脚本を書き、WIT STUDIO が制作したという情報と、あとは予告編で若干見た印象だけで観に行った。どういう話なのかも全く知らず(他に「企画・プロデュース」で川村元気というビッグネームも名を連ねていたが、それは後から知った)。

しかし、初めのほうでいきなり説明的な台詞があってげっそりした。僕は登場人物が観客に状況を説明するために不自然な台詞を吐くのが大ッ嫌いである。それと、せめて英語のタイトルだけでも BUBBLES にしておけば良いのに、単数形はあり得ないだろう、などと余計なことを考え始めていた。

しかし、話がどんどん展開して行くと、その圧倒的な作画能力の前に完全に屈してしまった。

モチーフは『人魚姫』だそうだ。しかし、僕は男の子だったので、小さいときに絵本で『人魚姫』を読んだという記憶もないし、いまだにどんな話かも知らない。でも、荒木哲郎監督は知ってたってことか?

ただ、この作品の面白さは人魚姫自体にあるのではなく、その人魚姫を“重力が壊れた東京”という舞台に置いたことである。

鉄骨や岩などが空中に漂い、空からは5万と泡が降り、その泡をぴょんぴょん蹴って宙を移動する。──東京バトルクールというスポーツと言うかゲームと言うか、その団体戦に、もはや首都ではなくなった東京で、死んだ家族に取り残された若者たちが興じている。

街には泡が溶けた水が溢れ、ビルは傾き(阪神淡路大震災の直後にこういう風景をたくさん見たことを俄に思い出した)、ねじれた電車の車列が宙に浮いている。そして、海には「蟻地獄」と呼ばれる強烈な渦が巻いており、そこに落ちたら一巻の終わりだ。

そんなところをヒビキたちは縦横無尽に飛び跳ねる。このめまぐるしく動く構図は、まさに『進撃の巨人』の「立体機動」そのものだ。あっちは人家の屋根や森などが背景だが、こっちはビルであり、そして爆心地であり半分壊れた東京タワーがバックである。

いずれにしても、この画の動きは圧巻としか言いようがない。

そして、海に落ちたヒビキを助けるウタ。彼女は泡になって消えるのではなく、逆に泡から組成して人間になった。後に少しずつ憶え始めるが、言葉もしゃべれない。だから、目で語る。この表情も本当に可愛くて、説得力があった。

話は割合単純で、そこに驚きはないのだが、やっぱりアニメは映像芸術なので、映像の魅力こそが最大の魅力である。2D と 3D のミックスなのだが、ものすごい情報量がうまく溶け合って情趣に溢れた映像になっていた。

あと音楽が重要な要素になっていたのだが、このマッチングも見事だった。

素晴らしい出来のアニメだったと思う。

ヒビキの声になんか聞き覚えがあるような気がしていたのだが、エンドロールを見ると志尊淳だった。

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