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Saturday, April 30, 2022

『異端の純愛』オンライン試写会

【4月30日 記】 『異端の純愛』(井口昇監督・脚本)のオンライン試写会を観た。

昨夜18:30から、クラウド・ファンディング支援者限定で、舞台挨拶と合わせて生配信があったのだが、僕は今日アーカイブ配信で観た。もちろん僕も支援者のひとりである。

上映前に舞台挨拶があった。

8人の出演者(八代みなせ、中村有沙、山本愛莉、中村優一、岡田佳大、大野大輔、井上智春、九羽紅緒)が登壇するという、映画館での舞台挨拶ではあり得ない賑わいである。

そして井口昇監督自らが司会者を務めた。あの大きなお腹を揺らせて、大きな顔をくしゃくしゃにして、短い手足をバタバタしながら、嬉しさのあまり声を裏返しながら進行していた。

これが約30分。さらに上映終了後にはほぼ同じメンバー(都合で2人抜けたが)による座談会が延々続いた。そして、配信の最初から、上映中を含んで、最後まで、観客はチャット欄にコメントを書き続けた。合計3時間半超の大イベントであった。

かなり極端に振った映画だ。見終わったらだれもがどんよりする作品だと思う。でも、初めて観たときに泣いたと言う出演者がいた。上映の後も泣いている出演者が何人かいた。

タイトルが井口昇の全てを語っていると思う。異端と純愛──この2つが井口昇の中で両立するのである。いや、両立するだけではなく、この2つが井口昇のメインの要素の2つなのである。

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Friday, April 29, 2022

『雨のなまえ』窪美澄(書評)

【4月29日 記】 今年の1月、初めて窪美澄を読んだ。『じっと手を見る』だ。

巧い作家だと思った(もっとも、巧くない作家なんて形容矛盾のはずなんだけど)。それで他にも読んでみたくて、いろいろ調べた末にこの本を選んだ。短編集だ。

しかし、これはひどい。いや、文章がひどいのではない。物語がひどい。いや、作家としての物語の作り方が稚拙だという意味ではなく、登場人物がほんとうにひどい状況に追い込まれる。作品によっては、もはや逃れられることのできない無惨な結末に突き落とされる。

それはいくらなんでもひどいでしょ、と思う。ともかく最後の急展開があんまりだ。

どの作品でも雨が降る。主人公が惨めに濡れたり、干してあった洗濯物がびしょ濡れになったり。

最初の話は表題作の『雨のなまえ』。

妊娠中の妻との波風のない暮らし。しかし、主人公の男は仕事で知り合った女に誘惑され、関係を持ってしまい、そのセックスで妻との間では決して感じられなかった快感があり、そのままそれがずるずる続く。

そして、ちょっとまずい展開になる。天罰か? いや、天罰なんかじゃない。人生ってそんなものなんだ。

どの話でもちょっとまずい展開によって、かなりまずい状況が現れる。そう、人生ってそういうものなのだ。

この小説を読んでいる僕だって、あるいは今この書評を読んでいるあなただって、明日すぐにそんなことにはならないにしても、4~5年後にはそんな苦境の中であがいているかもしれないのだ。

しかし、それにしてもあんまりだ。リアルすぎて救いがない。最後の『あたたかい雨の降水過程』だけは、そのタイトル通り少し救いがあるかもしれない。しかし、それは一点の曇りもない青空ではない。明日また激しい雨が降るかもしれないのだ。

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Wednesday, April 27, 2022

パスワード管理とソーシャル・アカウント連携

【4月27日 記】 皆さん、パスワードはいくつお使いですか? 気になって調べてみたら、僕の場合はざっと 140個ほどありました。

これらはほぼ全部生きているもので、パスワードを設定しておきながらそのまま忘れてしまい、使ってもいないのに退会もせず放置したまま、みたいなものを含めると、150 は軽く超えてくるでしょう。

もちろんこの 140 が全部違うものではないですが、近年ではできるだけ使い回しを避けないと危ないので、極力変えるようにしています。どんなに少なく見積もっても 100種類ぐらいはありますよね、きっと。

こんなにたくさんあると憶えられるわけがありません。さて、皆さんはどうやって管理していますか?──みたいなことを言うのかと思われたかもしれませんが、今回書きたいのは別のことです。

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Sunday, April 24, 2022

映画『ハッチング ─孵化─』

【4月24日 記】 映画『ハッチング ─孵化─』を観てきた。生まれて初めて観るフィンランド映画。

フィンランドには 2019年に夫婦で行ってきた。主目的だったオーロラはあまりはっきり見えなかったが、旅行としては大変楽しいものになった。だからか、フィンランドには何となく親近感がある。

映画の冒頭は主人公の少女・ティンヤ(シーリ・ソラリンナ)が居間で体操の練習をしているところ。そのレオタード越しに背骨の骨一つひとつをアップで映す。

こういう出だしはあまり見たことがない。が、話が身体に関するものだから、そして、見た目が骨っぽい鳥に関するものだから、もう最初から少し怖い。

そして、街路樹や森の木々。そう、フィンランドは森の国だ。僕らが行ったのは秋の終わりだったけれど、この映画では木々がもう少し長い日照を浴びることができる季節なのだろう。

この家は4人家族。

理想的な家庭を演じ、その動画をネットで流すことに血道を上げている母(ソフィア・ヘイッキラ)、優しく家庭的だが妻には何も言えない父(ヤニ・ヴォラネン)、母の期待を一身に背負って体操の大会出場を目指しているティンヤ、そして甘えん坊の弟マティアス(オイヴァ・オッリラ)。

一家団欒の最中に家に飛び込んできて暴れまわっていろんなものを壊したカラスを、母は布の上から首をひねって「生ゴミ」にしてしまう。ところが、その鳥が死んでいなかったようで夜中に騒いでいるのを聞いたティンヤが森の中で発見し、石で何回も殴って楽にしてやる。

もう、冒頭からかなり恐ろしい。

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Saturday, April 23, 2022

【note】 醜く老いてはいけないな

【4月23日 埋】 例によって、最近 note に書いた雑文を埋め込んでおきます。

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Wednesday, April 20, 2022

カードと財布

【4月20日 記】 長年使ってきた財布がだいぶ傷んできて、そろそろ買い替えようかと思って気づいた。

僕はもう何年も、カードができるだけたくさん入る一方でコンパクトな財布を探し求めて買ってきた。しかし、もうカードはそんなに入らなくて良いのだ、と。

思えばこの何十年間か、カードは増える一方だった。

最初はクレジットカード。会社に入って、上司に1枚ぐらい持っておいたほうが良いと言われて持ったのが最初。

あの当時は、この店では JCB しか使えない、この店では VISA しかダメ、みたいなことがフツーにあって、1枚では不安だったので、結局2枚か3枚を常時持つようになった。

それから銀行のカード。最初は家に置いておいてお金を出し入れするときだけ持って出た。昔はお金の出し入れは、給料日など特定の日に限られた、むしろ非日常的なものだったのではないかと思う。

ところが、ATM が普及するに連れて、お金はいつでもどこでも降ろせるものになり、逆にカードを持ち歩かざるを得なくなったような気がする。

もちろん今でも普段は家にカードを置いている銀行もいくつかあるが、使用頻度が一番高い口座のカードは常に持ち歩くようになった。

あ、広い意味でのカードと言えば、クレジットカードよりも前に、定期券と運転免許証があったか。テレフォンカードもあったし。

それから電子マネーが出てきた。iD とか Edy とか QUICKPay とか。今では交通系カードやコンビニ系カードも必携だ。何種類も持ち歩いている人もいるだろう。

それ以外でもいろんな小売店や施設などのスタンプカードや会員証など、そして病院の診察券。会社の ID もカードになったし、昔は紙だった健康保険証も今ではカードだ。

ことほどさように、数え上げればどう考えても財布に入り切らないほどのカードがあり、だから、それらをできるだけたくさんコンパクトに収められる財布を求めていたのだ。

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Monday, April 18, 2022

『世界が広がる推し活英語』監修・劇団雌猫(書評)

【4月17日 記】 基本的には英会話の本である。しかし、Amazonランキング第1位になったというのは読み物としても面白いからだろう。僕もネット上で記事を読んで、面白そうだったから発売前に予約して買った。

帯には「日米のオタクが本気で作った単語・フレーズ集」とある。例えば「推し」は fave である。favorite が略されたもので、これは僕もこの本を読む前から知っていた。

1単語、1フレーズごとに必ず例文が載っているのが良い。

「グッズ」は merchandise を略して merch と言う。──これは知らなかった。で、そこには I cleaned and rearranged my merch alter. などという例文が載っており、「祭壇の掃除と模様替えをした」という訳がついている。

なるほど、グッズを飾っておく場所をオタクの人たちは「祭壇」と呼んでいるのか、と今度は逆に日本語(オタク語?)の勉強にもなる。んで、英語でも alter なのか!と、もう一度英語の勉強にもなる。

そう、この本の最大の面白さはここなのである。

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Sunday, April 17, 2022

【note】 魅惑のペンタトニック・スケール

【4月17日 埋】 大昔に自分のホームページに書いていて、何年か後にそれに加筆修正してこのブログにアップした文章に、この度さらに手を入れて note に公開しました。

それに合わせて、このブログに載せているバージョンも note と同じ文章に書き換えました。ま、note で見ていただくほうが読みやすいとは思いますが。

『魅惑のペンタトニック・スケール』

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Saturday, April 16, 2022

映画『ナイトメア・アリー』

【4月16日 記】 映画『ナイトメア・アリー』を観てきた。

誰かの死体を遺棄して家に火をつけて逃げてきた男スタントン・カーライル(ブラッドリー・クーパー)がカーニバル一座に流れ着く。そして、マネージャーのクレム(ウィレム・デフォー)に邪険にされながらも結局そこで職を得ることになる。

そこでは生きた鶏の首を食いちぎって生き血を吸う獣人(ギーク)ショーが行われている。

僕は、もう何年前だったか(大人になってからだ)、どこだったか(もちろん日本国内だ)で観た見世物小屋の「ヘビ女」を思い出した。何の因果か身をヘビにやつした(こう言っては失礼だが)とても醜い小太りの女性が生きたヘビを食いちぎるショーだった。

何故ヘビになった女が同類のヘビを食いちぎるのか訳が分からなかった。そして、そのシーンを思い出して、映画の出だしから気分が悪くなった。

しかし、最後まで観て思い出したのは、まるっきり毛色の違う映画ではあるが、『太陽がいっぱい』だった。

これは底辺まで落ちぶれた男スタンがのし上がっていく話である。

スタンがカーニバルで初対面から目をかけてくれたジーナ(トニ・コレット)に救われ、ジーナの相棒のピート(デヴィッド・ストラザーン)から読心術を学び、感電ショーで人気を博しているモリー(ルーニー・マーラ)と恋に堕ちて一座を出るところから次のストーリーが始まる。

都会のホテルで読心術のショーが好評な2人の前に現れた心理学博士リリス(ケイト・ブランシェット)との出会いをきっかけに、スタンの野心がねじ曲がった方向に暴走し始める。僕はそこに『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンを観たのである。

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Thursday, April 14, 2022

『ハケンアニメ』完成披露上映会

【4月14日 記】 映画『ハケンアニメ』の完成披露上映会に行ってきた。舞台挨拶もあった。Photo_20220414222701

僕は辻村深月の原作小説を知らなかったので、「派遣アニメ」とは何ぞや?と思ったのだが、そうではなくて「覇権アニメ」だった。

これは公務員から転職してきた新人アニメ監督・斉藤瞳(吉岡里帆)+敏腕プロデューサー行城(柄本佑)らのチームと、天才アニメ監督・王子(中村倫也)+「伝説の制作進行」から今は P に昇格した有科(尾野真千子)らのチームがアニメ界の覇権を争うドラマである。

辻村深月はもちろん綿密な取材をした上で原作を書いたのだろうし、監督もそれを忠実になぞったのだろうとは思うのだが、なんか細かいところをいっぱい単純化してしまったような気持ち悪さがあるのは否めない。

それは必ずしもアニメの制作現場という狭いところに限った話ではなく、仕事というものの進め方とか、あるいはもっと広く人間の意識の流れみたいなところまで及ぶのだが、所謂「胸熱ドラマ」にするためにいろんなものを捨象してしまったような感じが僕はした。

これは僕だけの感じ方なのかどうか、他の人にも訊いてみたい気がする。

しかし、最初にそういうことを書いた上で言うと、ドラマとしては成功だったのではないだろうか。

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Tuesday, April 12, 2022

『オーバーストーリー』リチャード・パワーズ(書評)

【4月12日 記】 電子書籍の困ったところは本の厚さが分からないところだ。読む前に手に取って確かめることもできないし、読み始めてしばらく経ってからも今で全体のどの辺りまで読み進んだのかが掴みづらい。

この Kindle本の場合はページ数(Kindle の画面数ではなく、恐らく元の紙の本のページ数だろう)が出ていたのだが、読み終わってみると 750ページを超えているではないか(しかし、1ページにどれくらいの文字数が詰まっているのかがやっぱり分からない)。

ただ、この本に圧倒されるのはページ数だけではない。

この小説もまた、いかにもパワーズらしい、頭がクラクラするような膨大な専門知識と深遠な哲学的観点を詰め込んだ、べらぼうな書物なのであった。例によって、読み終わるまでにものすごい時間を費やしてしまった。

木の話である。

最初の話はノルウェー系移民のホーエル家の話。ヨルゲン・ホーエルがポケットに入っていた栗の実をアイオワ州西部の土地に植えたものが育って大きな木になる。ヨルゲンの息子ジョンは毎月21日にその栗の木の写真を撮り始め、撮り続ける。

それはその後も子供たち受け継がれ、ジョンの孫ニコラスの手に渡る。しかし、ある年のクリスマスイブに、ニコラスを除くホーエル家の人々は全員プロパン・ガス中毒で死んでしまう。

2つ目の話は上海からの移民、ミミ・マーの話。ミミの父シューシュインは父親から翡翠に過去・現在・未来を表す3種類の木の彫刻が施された3つの指輪と阿羅漢(アラハット)を描いた巻物を託される。

その財産を持ってシューシュインはアメリカに渡り技師となる。ミミは幼少時代、庭にあった桑の木によく登った。父が死んだ後3つの指輪は3人の娘に、阿羅漢の巻物は長女ミミに遺された。

3つ目の話は「社交性の面で発育遅滞がある」アダム・アピチの話。庭には5種類の木が植わっており、それぞれアピチ家の子どもたち5人を表している。

アダムは標本集めが趣味になる。そして興味の対象は虫に変わり、木にも興味を覚え、やがてそれは心理学に取って代わり、いろいろあったが無事に大学に進んだアダムの専攻となる。

その辺りまで読んで(まだ、12%だ)、ああ、きっとこれらのバラバラの物語がどこかで繋がって来るんだなと思っていたら、次の章はまた別の主人公、次の章はまた別の土地と登場人物と、どんどん変わるばかりで一向に繋がる気配がない。

そうか、これは木をテーマにした連作短編なのだ、と思い始めたら、ちょうど3分の1(33%)に達したところから、この9人の登場人物が次第に繋がり始める。

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Saturday, April 09, 2022

映画『今はちょっと、ついてないだけ』

【4月9日 記】 映画『今はちょっと、ついてないだけ』を観てきた。

いろんな要素を盛り込みすぎて、しかも時間が頻繁に前後するので、ちょっと分かりにくくなっている部分もあるが、まあ、良い話である。

そう、辛い境遇にあっても、「今はちょっとついてないだけ」と思うことができたら、なんとか生きて行ける──。

これはそんな、今はちょっとついてないだけの4人が少しずつ再生して行く物語である。

写真家の立花浩樹(玉山鉄二)は若い頃世界の秘境を旅するテレビのレギュラー番組でそれこそ一世を風靡したのだが、何があったのか今は表舞台から姿を消してひっそりと生きている。

テレビマンの宮川(音尾琢真)は人気バラエティの担当として活躍していたが、ある日風向きが変わって露骨な左遷を受け、やがて辞めてしまう。辞めてしまったため家族との関係も壊れ、家を出ることになってしまう。

美容部員の寛子(深川麻衣)は人とのつきあいが下手で、仕事でも壁に当たって悩んでいた。

この3人が、たまたま前から寛子が住んでいたシェアハウスで同居することになって、そこからドラマがスムーズに転がり始めるのだが、それまでの3人の境遇を描いた序盤がやや複雑で、ややわざとらしく、ちょっともたもたする感はある。

大仰な劇伴が鳴りっぱなしだったのも、僕としては気に入らなかった。

でも、3人が出会ってからは割合良い感じの映画になったと思う。

やがてその3人に落ちぶれ芸人の会田建(団長安田)が加わって、彼らは4人のチームとなる。カメラマンとして昔の感覚を取り戻した立花を中心に、寛子はメイクで、宮川は元テレビマンの経験で立花を支える。

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Friday, April 08, 2022

WOWOW『TOKYO VICE』#1(そこそこネタバレあり)

【4月8日 記】 昨夜、WOWOW がハリウッドと共同制作したドラマ『TOKYO VICE』の#1「新聞記者」を WOWOWオンデマンドで観た。放送は 4/24 スタートの全6話らしいが、初回だけ先行配信したのだ。

監督は『インサイダー』、『コラテラル』、『フォードvsフェラーリ』などのマイケル・マン(僕は一作も観たことがない)。舞台は東京。主演はスピルバーグの『ウェスト・サイド・ストーリー』で主役のトニーを演じたアンセル・エルゴート。

ジェイク(アンセル・エルゴート)と片桐(渡辺謙)の2人が、ヤクザが待ち構える高級ホテル(多分ロケ地は帝国ホテルだ)のレストランの VIPルームに向かうところからドラマは始まる。

この時点では、この2人がどういう関係なのか明かされていないのだが、後にジェイクは新聞記者、片桐は刑事だということが分かる。ここでジェイクはヤクザから今お前が書こうとしている記事を書くなと脅される。

そして、そのあと話は2年前に飛び、ジェイクの人となりが語られる。

ジェイクは日本文化に興味を抱いて来日し、上智大学で学び、合気道の道場にも通い、小さな居酒屋の2階に下宿している。そして、明晰な頭脳と卓越した日本語読み書き能力で難関の入社試験を突破して、明調新聞の記者となる。

しかし、もうこの辺りからなんだかおかしい。ここで描かれている日本は、いかにもアメリカ人にありがちな、大和(やまと)も中華もインドもごっちゃ混ぜの東洋エキゾチシズムであり、理解しそこねた日本なのである。

そもそも時代が分からない。携帯電話が出てくればガラケーなのかスマホなのかで想像がつくのだが、それもない。ひょっとしたら携帯なんてまだどこにもなかった時代なのかと思ってしまう。

確かに出てくる固定電話がめちゃくちゃ古い。そう言えば昔あんなのを使ってたなという留守録機能が売りの電話とか、一般家庭にはなかったけど事務所にはあったかもしれない、ダイヤルの代わりに押しボタンがついた電話とか。

ジェイクが弁当を買う店はコンビニではなく昔のよろず屋的な食料品店だし、ジェイクの下宿ももろ昭和だし、今のノートパソコンの数倍の厚みのある嵩高いワープロで文章を打っているし…。

それで、番組ホームページで調べたら「1990年代」と書いてあるからびっくりである。いくらなんでもそれはないんじゃない?

確かに1990年代前半であれば、まだパソコンも携帯もそれほど普及はしていない。しかし、このドラマの中には物質的にも精神的にも、昭和前期みたいなものがありすぎるのである。

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Thursday, April 07, 2022

原田真二に思う

【4月7日 記】 昨日の記事でちょっとだけ『タイム・トラベル』に触れたが、原田真二が出てきたとき、僕は本当にぶっ飛んだ。とんでもない天才が現れたと思った。

でも、セールス的に華々しかったのはデビュー曲から3ヶ月連続リリースとなったシングル『てぃーんず ぶるーす』、『キャンディ』、『シャドー・ボクサー』の3枚と、4枚目の『タイム・トラベル』までだから、その間半年ぐらいのものだ。

それを考えると、彼のことを短期間で消えた一発屋みたいに思っている人もいるかもしれない。本人が脱アイドルを目指したことも影響しているのだが、そんなこと知らない人もいるだろう。

しかし、僕はその4曲を聴いただけでも文句なしの天才だと思っているし、後に松田聖子のコンサートの音楽監督をやっているのを知って嬉しく思ったりした口だが、一方で「原田真二って、あれだけ売れたのに、どこ行っちゃったんだろうね?」なんて言う人もいただろう。

でも、安易にそういうことを公のところに書いたりするのは非常に危ないのだ。

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Wednesday, April 06, 2022

『風街オデッセイ』を観る/聴く

【4月6日 記】 昨年の 11月6日に日本武道館に『風街オデッセイ2021』の2日目を聴きに行って、それが今年のいつだったか WOWOW で放送されて録画した。

で、1日目の冒頭の何曲かを聴いたのだが、なにしろ2日間合計で6~7時間ある。こりゃ全部見られるかな?と思って、ちょっと中座したままになっていたのだが、今月に入って再開した。

20分でも30分でも、時間があるときに数曲ずつ聴いている。前にも書いたが、こういう音楽番組であれば、僕らの世代でも抵抗なく細切れに観られる。

特にテレビの番組改編期は毎週ドラマに追われることがないので、こういうものを観るチャンスである。

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Sunday, April 03, 2022

【note】 やさしさを感じた言葉

【4月3日 埋】 ひょっとしたら1本か2本抜けたかもしれませんが、それは無視して一番最近 note に書いた記事を埋め込んでおきます。

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Saturday, April 02, 2022

映画『やがて海へと届く』

【4月2日 記】 映画『やがて海へと届く』を観てきた。彩瀬まるの同名の原作小説は読んだ。この1作しか読んでいないが、多分僕が好きなタイプの作家ではないかと思った。書ける作家だ。

ダイニングバーに務める28歳の真奈(岸井ゆきの)。彼女の大学時代からの親友・すみれ(浜辺美波)が行方不明になってもう随分経つが、真奈はすみれの不在をどうしても受け入れられない。

それに対して、すみれの彼氏であった遠野(杉野遥亮)やすみれの母(鶴田真由)はすみれがすでに亡くなったものとして、まるで自分たちが立ち直るために記憶から葬り去ることが必要であるかのように振る舞う。真奈にはそういう彼らの割り切りがとてもきつい。

物語が少し進んだところで、すみれがどこでどうして行方不明になったのかが明かされる。それが分かるまでは正直言ってなんだかかったるい小説だという印象もあった。それはこの小説を読んでいない人が映画を観たときも同じではないだろうか。

そして、そのことが解って初めて、この映画の冒頭のアニメーションの意味がぼんやりと(あくまでぼんやりとであるが)見えてくるのである。そうか、この作品はそういう喪失感を描きたかったのか、と。

しかし、よくもまあこんな難しいテーマに挑んだと思う。よくもまあこの小説を映画化しようなどと思ったものだ。他ならぬ彩瀬まる本人が「『えっ? できるの!?』と驚きました」と言っている。

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Friday, April 01, 2022

『大人になって』

【4月1日 記】 久しぶりに楽曲を単品で買った。アイナ・ジ・エンドの『大人になって』。今 GALAXY の CMソングに使われていてかなり評判になっている曲。

オリジナルは 2012年の YUKI のアルバム『POWERS OF TEN』らしいが、僕は全然知らない。そもそも YUKI という歌手の声が嫌いだから、JUDY & MARY 時代からちゃんと聴いたことがない。

それに対して、アイナ・ジ・エンドという人についても僕はそれほど知っているとは言えないのだが、CM でこの曲が流れてきた瞬間にビクンッとして、これは買わなければと思った。

この人の声は好きだ。たまらなく良い声だと思う。そして、その声の使い方──つまりは、表現力も秀逸だ。

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