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Wednesday, March 02, 2022

『大河への道』マスコミ試写会

【3月2日 記】 映画『大河への道』のマスコミ試写会に行ってきた。Photo_20220302214201

伊能忠敬を題材にした立川志の輔の新作落語が原作ということで、基本的に会話劇のコメディなのだが、ピクトリアル的にも随所に見せ場がある。

伊能忠敬が海岸線を歩いて測量する実態はそれほどつぶさに描かれるわけではないのだが、最後に来て完成した日本全土地図の豪華絢爛な見せ方などは却々見事だった。

そして、最初のほうのシーンでもカメラワークに驚かされた。

多分千葉のどこかの海岸で、千葉県香取市役所総務課の池本(中井貴一)が脚本家の加藤(橋爪功)に薀蓄を垂れていたら加藤がぷいっとフレームアウトして、気がついた池本が加藤を追い始めたところでカメラがスーッと引いたかと思ったらどんどん上空に上がってすごいロングの画になったのだ。

海岸線と波頭がものすごくきれいに描かれて、大げさかもしれないがちょっと度肝を抜かれた。プレスリリースに撮影監督の名前が書いていない(プロデューサー名もない)のだが、確か柴主高秀だったと思う(見間違えていたらゴメンナサイ)。

さて、映画の冒頭は、松竹の富士山が終わると蝋燭を照明とする薄暗い和室。どう見ても現代ではない。そこに顔に布を被されて横たわる遺体と、それを取り囲む何人かの人たち。

──映画館を間違えて入った人ででもない限り、これが伊能忠敬臨終のシーンだという察しはつくだろう。するとそこで「先生にはもう少し生きていてもらいましょう」と何やら面妖な声が聞こえる。

場面は変わって現代。当地出身の伊能忠敬を郷土の自慢に思っている池本は、伊能忠敬が一度も NHK大河ドラマで描かれないことに不満を持っていて、香取市の観光振興のために NHK に掛け合おうという提案をするが、同僚たちは冷たい。

しかし、そこに千葉県知事から伊能忠敬を大河ドラマにする働きかけをしてほしいとの要請が来て事態は一変し、役所を挙げての運動となる。そして知事直々の指名で脚本は加藤に依頼することになるが、彼はもう20年以上何も書いていないし、この話にも乗り気ではない。

すぐにうろたえる池本に対して、少し挑発的な観光振興課の小林(北川景子)、見るからに粗忽な部下・木下(松山ケンイチ)、素直に池本の力になる安野(岸井ゆきの)ら、役所のメンバーはバラエティ豊かに揃えてある。

池本が菓子折りを持って加藤の家に行くと、最初は2人正面に向かい合って座っていたのが、途中で加藤が右のソファにずれて斜めの位置に外したりする、そういう細かい演出が何気に面白い。

で、加藤が漸く書く気になって構想を語りだしたところで映画は冒頭の時代劇に戻るのだが、この話の肝は、実は伊能忠敬は「大日本沿海輿地全図」が完成する3年も前に死んでいたということで、そこからいろいろと面白おかしく展開して行く。

で、時代劇のシーン、最初のところでは暗くてあまり顔が見えなかったのだが、ここに現代劇に出ていた役者が別のいろいろな役で順次登場するのがおもしろい。ほぼ全員が二役だ。もちろん立川志の輔も出てくる。

男ばかりのむさ苦しい芝居にならないように、北川・岸井の紅二点にも結構重要な役を振ってある。

時代劇的なカタルシスもほどよくあって、現代劇的なギャグやオチもちゃんとある。──いやあ、これ、面白いやん、と思って観ていたらエンドロールで森下佳子・脚本だったことを知る。面白いはずである。

しかし、監督の中西健二という人は全く知らなかった。若手かと思ったら 60歳とのこと。助監督を数多く務めたあと、映画の監督は5本目かな。

次回作が楽しみと言うほど演出の立った作品ではなかったけれど、少なくともこの作品はとても面白かった。5/20全国公開。

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