『DISCOVER JAPAN DX』鈴木雅之
【3月26日 記】 twitter で長年相互フォロー関係にある女性(本名も年齢も知りませんが、多分僕より少し年少)が買ったというのにつられて買ってしまいました。いや、買って良かったです(笑)
鈴木雅之はこれまでに『DISCOVER JAPAN』というタイトルで3作のカバー・アルバムを発表していますが、今回タイトルに「DX」をつけて出したこのアルバムには、その3作から厳選された曲を2枚の CD に、残りの1枚には新録音/リミックスを収めた3枚組です。
この人の場合はもうアレンジがどうとか曲の解釈がどうとかいうことじゃなくなってしまうんですよね。何と言ってもあの声! あの声が全てです。
どんなアレンジで何を歌っても、全部が全部鈴木雅之になってしまうのです。そして、そこには誰にも真似できない魅力があります。
と言っても、このアルバムのアレンジがつまらないということではありません。過去作は全て服部隆之の編曲です。正統で本格的なオーケストレーションです。新録音盤のほうも井上鑑、本間昭光、武部聡志ら錚々たるメンバーが編曲を担当しています。
16ビートのフュージョン風のアレンジから、8ビートのフォーク・ロック的なアプローチ、お洒落な4ビート・ジャズからしっとりとしたスローバラードまで、全くスキがありません。そのオーソドックスさに飽き足らない向きも多少あるかもしれませんが、いや、良いのです。鈴木雅之の場合はこれで。
どの曲もまるでカバーではなく鈴木雅之がもう 35年も歌い続けているオリジナルのヒット曲のように聞こえます。
とにかくこの声。音域によって表情が変わる豊かな声。ソフトに包み込むような低音、張りのある中音域、そして、何かを破って突き抜けて行くような高音。特に高音に関してはごく一部の曲のごくわずかな箇所を除いて、どれだけ音域が上がってもファルセットを用いずに地声で力強く突破してきます。
それが気持ちが良いのです。鼻濁音がちゃんと発音できているのも良いです。
収録曲があまりに多いのでいちいち書きませんが、服部アレンジは概ね原曲のアレンジのエッセンスをあまり変えずに組み立てられていて、原曲の良さと鈴木雅之の声の良さを見事に引き出しています。
例えば、僕はさだまさしという人があまり好きではないのですが、鈴木雅之が歌う『道化師のソネット』はとても良いのです。
1960年代から2021年まで、中にはそれほど流行っていなかった曲もあり、とても面白い、良い選曲だと思います。
3枚の CD に1曲ずつ大瀧詠一の作品があり、鈴木雅之がシャネルズでデビューする前から大滝詠一に可愛がられていたということを思い出しました。
一家に1セット、家宝もののアルバムだと思います。
※ 前に note に上げた記事『私が選んだ邦楽カバーアルバムの傑作』にも追記しておきました。
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