【3月2日 記】 映画『大河への道』のマスコミ試写会に行ってきた。
伊能忠敬を題材にした立川志の輔の新作落語が原作ということで、基本的に会話劇のコメディなのだが、ピクトリアル的にも随所に見せ場がある。
伊能忠敬が海岸線を歩いて測量する実態はそれほどつぶさに描かれるわけではないのだが、最後に来て完成した日本全土地図の豪華絢爛な見せ方などは却々見事だった。
そして、最初のほうのシーンでもカメラワークに驚かされた。
多分千葉のどこかの海岸で、千葉県香取市役所総務課の池本(中井貴一)が脚本家の加藤(橋爪功)に薀蓄を垂れていたら加藤がぷいっとフレームアウトして、気がついた池本が加藤を追い始めたところでカメラがスーッと引いたかと思ったらどんどん上空に上がってすごいロングの画になったのだ。
海岸線と波頭がものすごくきれいに描かれて、大げさかもしれないがちょっと度肝を抜かれた。プレスリリースに撮影監督の名前が書いていない(プロデューサー名もない)のだが、確か柴主高秀だったと思う(見間違えていたらゴメンナサイ)。
さて、映画の冒頭は、松竹の富士山が終わると蝋燭を照明とする薄暗い和室。どう見ても現代ではない。そこに顔に布を被されて横たわる遺体と、それを取り囲む何人かの人たち。
──映画館を間違えて入った人ででもない限り、これが伊能忠敬臨終のシーンだという察しはつくだろう。するとそこで「先生にはもう少し生きていてもらいましょう」と何やら面妖な声が聞こえる。
場面は変わって現代。当地出身の伊能忠敬を郷土の自慢に思っている池本は、伊能忠敬が一度も NHK大河ドラマで描かれないことに不満を持っていて、香取市の観光振興のために NHK に掛け合おうという提案をするが、同僚たちは冷たい。
しかし、そこに千葉県知事から伊能忠敬を大河ドラマにする働きかけをしてほしいとの要請が来て事態は一変し、役所を挙げての運動となる。そして知事直々の指名で脚本は加藤に依頼することになるが、彼はもう20年以上何も書いていないし、この話にも乗り気ではない。
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