『中学の知識でオイラーの公式がわかる』鈴木貫太郎(書評)
【1月1日 記】 大学受験の時には最大の苦手科目だったが、その前もその後もずっと数学は僕の好きな科目だった。そういうこともあって僕はちょくちょく数学関係の本も読んでいるが、この本はちょっと残念だった。
いや、この本がダメだとかひどいとかいう話ではない。
このタイトルを見て、「中学レベルの数学だけのベースに、例えば図形を使うみたいな工夫で、なんか魔法みたいにオイラーの公式が理解できてしまう本なのではないか」と勝手に思ってしまった僕が悪いのである。
この本はそういう本ではない。いや、そもそも、オイラーの公式を理解する魔法みたいなものは存在しないのである。
この本でやっていることは、まず、いろんな公式を証明する。そして、その公式を使って数式を解く。特別な値を代入したり、両辺に何かを掛けたり、あるいは両辺を微分したりしてきれいな形に整理して新しい公式を導く──という、高校の数学の時間にやったことと同じだ。
そういうことなら、僕は多分他の本やネット上のコンテンツで一度や二度は読んだ話だ。
そういうわけで、数式はいっぱい出てくる。ひょっとして数式を使わずにオイラーの公式を証明しているのでは?などと思ったら大間違い。そんなことはできるはずがない。だって、オイラーの公式自体が数式なのだから(読み始めてからそう気づいたw)。
オイラーの等式(ここでは「公式」ではなく「等式」の話をする)というのは大変不思議で美しく、それ故とても惹かれる等式である。
円周率を表す無理数 π(=3.141592…) と、2乗すると -1 になる虚数 i と、( e の定義はいろいろあるけれど) x で微分したら元と同じ関数 y=e^x になる無理数 e(=2.71828…)をグチャっと組合せたら -1 になってしまうという、それこそ魔法みたいな等式だ。
それぞれ最初に習う時には何の関係もなかった e と i と π が、なんでそうなるの?と不思議で不思議で仕方がない等式である。しかも、これを学ぶ上で、これまた何の関係があるの?と思ってしまう三角関数や対数まで出てくる。
でも、この等式はこつこつといろんなことを勉強してそれを積み重ねて行けば、世界的な数学者なんかじゃなくても証明できるんだよ、というのがこの本の趣旨なのだ。
だから、こつこつ等式を読むことになる。読んでこつこつ理解することになる。僕に言わせると高校の数学の授業と同じである。そして、証明できた時の喜びと達成感を考えると、数学はとても楽しい科目なのである。
ただ、そのことを示すための本であった。あっという間に読めた。
でも、それは僕がこれを読んで暗記しようなどと思っていないからである。数学は暗記する科目ではない、というのが著者が一番言いたかったことなのではないだろうか。
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