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Friday, December 24, 2021

文化としての東急ハンズ

【12月24日 転載】 東急ハンズがホームセンター大手のカインズに買収されたというニュースを聞いて少なからずショックを受けた。なんかひとつの時代が終わってしまったような気分になった。

関西にいた頃にしょっちゅう行っていた三宮店が閉店すると聞いて悲しい気持ちになったのが去年の年末である。

そして、先月、ついでに東急ハンズで買い物してから帰ろうと思って、わざわざ池袋に映画を見に行った際に、池袋店が10月末で閉店になっていたのを初めて知り、店舗跡の前で呆然と立ち尽くしてしまった。

閉めるなら他の支店じゃないのか、例えばもっと小さな店舗、例えば大丸の上の東京店とか、あるいはもっと郊外の店とか、と思った。

江坂店ができたのは僕が東京転勤したすぐ後だったのですぐには見に行けなかったのだが、東京・渋谷で初めてのハンズ体験をした。へえ、こんな商売があるんだと感心した。関西に戻ってからは主に三宮に通った。

そして、二度目、三度目の東京生活では、さらにいろんな支店を覗いてみた。最近では銀座店によく行っている。

誰でも知っていることだが、他の店でも簡単に手に入る商材、例えば洗剤とかシャンプーとかだったら、ハンズで買うより他所で買うほうが断然安い。

それでも買ってしまうのは、もちろん何でも揃っているから他のものを買ったついでにということもあるが、意識の流れとしてはもっと根本的なものがあると思う。

それはあそこで買い物するのが楽しいからである。

値引きのない定価販売であっても買っていたのはそこに文化を感じ取っていたからだと僕は思うのである。ハンズに行くのはある種、いろんな文化とのめぐりあいだったんじゃないだろうか。

売る側の立場としては、それを文化と呼ぶのではなく、コンセプトと言うべきなのかもしれない。僕らはそれに乗せられて、と言うか、心地よくそれを受け入れて買い物をしていたのではないだろうか。

それは他にも例えば、僕にとっては、MUJI や UNIQLO でも同じだと思う。

UNIQLO は言ってみれば東急ハンズとは逆に安売り店ではあるが、創設当初の安かろう悪かろうのイメージをある時期に完全に払拭して、安くてもファッションという側面を押し出して行った。

変な表現だが、大金持ちでも恥ずかしく思わずに買えるし、実際大金持ちも買うブランドになったのである。それも文化ではないだろうか。

いろんな店がいろんな人にとって文化を感じさせた時に人は買う傾向があるのではないだろうか。例えば、僕はドン・キホーテにそれほど惹かれないが、ドン・キホーテにある種の文化を感じる人もいるだろう。そういう人はドンキに通うはずだ。LoFt に文化を感じる人もいるだろう。

他にもあるいは飲食店や雑貨店、宿泊施設やレジャー施設、そしてそれ以外のいろんなサービスに人は文化を感じることがある。逆に人に文化を感じさせることができれば、その企業は成功したと言えるのではないだろうか。

それぞれの人にとってそれぞれの文化がある。そして、東急ハンズは多くの人のいろんな文化を集結していたように感じる。

カインズは当面は「東急ハンズ」の名を残すと言っているが、それはつまり、どこかのタイミングで名前を変えるという意味だ。

その名前がなくなってしまうことを僕は大変淋しく思うが、しかし、カインズのほうもいつまでも東急という名前を使いたくないだろうし、それよりも東急の資本が一切入っていない店に東急という名が冠せられているのは東急としても具合が悪いだろう。だから、名前が変わることは仕方がない。

カインズについては、家の近所に店舗がなかったこともあり、僕は一度も店に入ったことがないし、それどころかカインズという名前についても、どこかで聞いたことがあるような気はしたが、何の店なのか分からなかった。

だから、そんな何の知識もない状態で、カインズは東急ハンズを継承する資格がないと思うとか、そんな企業が買収したことを不満に思うとか、そういうことは一切ない。

店名、ロゴ、業態、品揃えなど、どうして行くのかは知らないが、カインズなりの文化をちゃんと作り上げて行ってくれたら良いなあと思うのみである。

ただ、やっぱり、何度も何度も行った店が日本中から一斉になくなってしまうことは大変淋しいことではある。だから何かが終わってしまったような気がすると書いた。

カインズに対しては何の悪意もないのだけれど…。

そう、そもそも今回はカインズ側が無理やりな手口で株を買い占めたというようなことではなく、単に儲からなくなったから東急がハンズを売ったということでしかない。

どうしてそうなったのか? 東急がうまく文化を打ち出せなくなったのか? あるいは客がもはや文化を求めなくなったのか?

後者であるならなおさら哀しい。

(以上は note に投稿した文章のコピペです)

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