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Thursday, December 30, 2021

『NETFLIX 戦略と流儀』長谷川朋子(書評)

【12月30日 記】 著者とは面識がある。彼女の書いた記事もネット上でそこそこ読んできた。だが、こういうまとまった形での単独著作/出版を読むのは初めてである。

すまぬ、今までちょっとなめてた(笑) これは却々の良書である。

僕がこれまで読んできたのはインタビューであったり番組の展示会や見本市の取材報告であったりしたので、今回もそういう簡便なまとめ記事かと思って読み始めたのだが、しっかりと全体的な構想があり、理念を感じさせる文章である。

長いキャリアのある人である。僕は長らくむしろ番組の海外展開の専門家だと思っていた。もちろんそれはそうなのだが、単なる番組販売に留まらず、NETFLIX の取材についても 2014年から続けてきたのだそうだ。

各国/各部門のキーマンと会い、論点をまとめ、それぞれの話を点に終わらせず線で結び、俯瞰的な考察にまとめ上げてある。そして何よりも、彼女自身が NETFLIX の番組を観てる観てる、驚くほど観てる(笑)

僕は実は NETFLIX はこれまであまり観てこなかった。過去2回加入して、2回とも無料視聴期間内で退会している。2回目は引っ越した後だったこともあってかもう一度無料視聴が適用されたのだが、残念ながら今はもう無料期間の制度はなくなっている。

でも、『浅草キッド』がどうしても観たくて近々3回目の加入をする気だったのだが、この本を読んだおかげで、今度入会したらもう退会することはないのではないかとさえ思っている。

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Tuesday, December 28, 2021

回顧:2021年鑑賞邦画

【12月28日 記】 例年通り「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」を選んでみた。今回で 16年目。

毎年同じことを書いているが、これは僕が選んだ今年のランキングではない。また、「『キネマ旬報ベストテン』の上位に入るであろう邦画10本」でもない。客観的評価や予想ではないのだ。何と言うか、応援であり思い入れの強さであって、あくまで「キネ旬の」「20位以内に」「入ってほしい10本である。

今年映画館か試写会で観た邦画は全部で 52本。コロナ禍で減った去年から少し盛り返した。

その中から、まず一覧表を眺めながら、本数を考えずに選び出したら、次の 16本になった。

今泉力哉監督と石井裕也監督が2本ずつ入っている。

他の監督も選びたいからここは1本ずつに絞るべきだろうと考えて、今泉力哉監督は『かそけきサンカヨウ』を落として『街の上で』に、石井裕也監督は『茜色に焼かれる』を選んで『アジアの天使』を外した。逆に残した2本はそのまま「入ってほしい 10本」に選んだ。

さて、残り 12本から8本を選ばなければならない。今度は外す対象ではなく、どうしてもこれは外せないと思う映画をピックアップしてみたら、『くれなずめ』、『ドライブ・マイ・カー』、『鳩の撃退法』、『空白』、『ひらいて』、『草の響き』が入った。

さあ、残り2本。これが結構難しかった。好みから言えば『子供はわかってあげない』と『ボクたちはみんな大人になれなかった』なのだが、今年は何としても『東京リベンジャーズ』を推したい気持ちがある。

悩んだ末にもう一度考え方を改めて、逆にこの3本を採って『ドライブ・マイ・カー』を外すことにした。この映画はどうせキネ旬ベストテンに入るだろう。毎年「どうせ入るだろう」という映画は外すことが多い(笑) そういう意味では『花束みたいな恋をした』もハナから選んでいない(ちなみに、この映画は僕は大好きです)。

結果として、今年の「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」は下記の通りとなった:

  1. 街の上で
  2. くれなずめ
  3. 茜色に焼かれる
  4. 東京リベンジャーズ
  5. 子供はわかってあげない
  6. 鳩の撃退法
  7. 空白
  8. ひらいて
  9. 草の響き
  10. ボクたちはみんな大人になれなかった

例年書いている通り、これは僕が観た順番であって、評価の高い順ではない。

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Sunday, December 26, 2021

『不在』彩瀬まる(書評)

【12月26日 記】 今年の6月に初めて読んで、この作家が好きになった。とても巧い作家だと思う。

前に読んだ『やがて海へと届く』は幻想的な要素のある作品。今作にも少しそんな要素も織り込んであるが、テーマはむしろ日常にある。

成功した漫画家の主人公・明日香。両親の離婚で母親に引き取られ、長らく音信不通になっていた父が亡くなり、医者だった父の職場であり自宅でもあった洋館を相続することになる。

まだあまり売れていない役者で、年下のパートナーの冬馬にも手伝ってもらって、遺品の整理に取り掛かる。古い屋敷に残された父の生活の痕跡には自分には馴染みのないものがたくさんある。そして、時々2階に忍び込んで何かをしている男の子がいる。

自分ではなく勉学優秀だった兄を引き取った父に対して、自分は見捨てられたという思いに苛まれ、母の考え方にもときどき違和感を抱き、作品論を巡って出版社の編集者とも決裂し、やがて冬馬との関係にもヒビが入ってくる。

巻末に解説で村山由佳がこんなことを書いている:

こう言っては何だが、好感度の高い主人公ではない。大人になりきれず、自己中心的で居丈高な、いやな女である。

僕は「いやな女」と言うほどの嫌悪感は覚えなかったが、しかし、不完全な、欠点のある人間であることは確かだ。

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Saturday, December 25, 2021

映画『呪術廻戦0』

【12月25日 記】 映画『呪術廻戦0』を観てきた。

『呪術廻戦』については、僕は原作漫画こそ読んでいないが、テレビアニメのほうは、かなり前のめりに、相当入れ込んで 24話全てを観ている。

本編に対する前日譚のタイトルに「0」をつけるというのは一体いつごろからどの作品で始まったのだろう。僕の観た映画の中では 2007年の『クローズZERO』かな。

ということで、この映画もテレビアニメに対しては前日譚ということになる。ただし、後から作られたのではなく原作の漫画『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』に基づいている。ちなみに、今回の鑑賞特典として『呪術廻戦0.5』という小冊子がついてきた。05

というわけで、主人公は虎杖悠仁ではない。虎杖が呪術高専に入学する1年前の話で、従って伏黒恵も釘崎野薔薇も出てこない。禪院真希、狗巻棘、パンダがまだ1年生だ。

主人公は乙骨憂太。五条先生によって呪術高専の1年に転入させられる。いや、あるいは、確かに乙骨憂太をめぐる話ではあるけれど、主人公は五条悟であるという見方もできる。

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Friday, December 24, 2021

文化としての東急ハンズ

【12月24日 転載】 東急ハンズがホームセンター大手のカインズに買収されたというニュースを聞いて少なからずショックを受けた。なんかひとつの時代が終わってしまったような気分になった。

関西にいた頃にしょっちゅう行っていた三宮店が閉店すると聞いて悲しい気持ちになったのが去年の年末である。

そして、先月、ついでに東急ハンズで買い物してから帰ろうと思って、わざわざ池袋に映画を見に行った際に、池袋店が10月末で閉店になっていたのを初めて知り、店舗跡の前で呆然と立ち尽くしてしまった。

閉めるなら他の支店じゃないのか、例えばもっと小さな店舗、例えば大丸の上の東京店とか、あるいはもっと郊外の店とか、と思った。

江坂店ができたのは僕が東京転勤したすぐ後だったのですぐには見に行けなかったのだが、東京・渋谷で初めてのハンズ体験をした。へえ、こんな商売があるんだと感心した。関西に戻ってからは主に三宮に通った。

そして、二度目、三度目の東京生活では、さらにいろんな支店を覗いてみた。最近では銀座店によく行っている。

誰でも知っていることだが、他の店でも簡単に手に入る商材、例えば洗剤とかシャンプーとかだったら、ハンズで買うより他所で買うほうが断然安い。

それでも買ってしまうのは、もちろん何でも揃っているから他のものを買ったついでにということもあるが、意識の流れとしてはもっと根本的なものがあると思う。

それはあそこで買い物するのが楽しいからである。

値引きのない定価販売であっても買っていたのはそこに文化を感じ取っていたからだと僕は思うのである。ハンズに行くのはある種、いろんな文化とのめぐりあいだったんじゃないだろうか。

売る側の立場としては、それを文化と呼ぶのではなく、コンセプトと言うべきなのかもしれない。僕らはそれに乗せられて、と言うか、心地よくそれを受け入れて買い物をしていたのではないだろうか。

それは他にも例えば、僕にとっては、MUJI や UNIQLO でも同じだと思う。

UNIQLO は言ってみれば東急ハンズとは逆に安売り店ではあるが、創設当初の安かろう悪かろうのイメージをある時期に完全に払拭して、安くてもファッションという側面を押し出して行った。

変な表現だが、大金持ちでも恥ずかしく思わずに買えるし、実際大金持ちも買うブランドになったのである。それも文化ではないだろうか。

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Wednesday, December 22, 2021

ルータ買い換え追々記

【12月22日 追々記】 ルータ買い換え追記の追記。

今回は使ってみて分かったことと言うより、依然謎の部分。

Wi-Fi に繋がった時にタスクバーに出てくる扇形の Wi-Fi マークにマウスオーバーすると繋がっている Wi-Fi名が出てくるが、これが実際に繋がっている Wi-Fi名と違っていることがある。

つまり、マウスオーバーしていたボタンをクリックすると、先ほどとは違う Wi-Fiに接続されていると表示されるのである。これは何だろう?

例えば前の記事に書いた Buffalo-G-1234-2 と Buffalo-G-ABCD は名前こそ違うが実体は同じ、みたいなことなんだろうか?

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Monday, December 20, 2021

ルータ買い換え追記

【12月20日 追記】 ルータを買い換え3日目にしていろんなことが分かってきた。

まず、前提として、僕が新しいルータの引き継ぎ機能を使って古いルータの SSID と暗号化キーをそのまま使う設定をしたということがある。

で、使い始めていると、同じような SSID が2つ出てきているのに気づいた。

例えば、古いルータで使っていた SSID が Buffalo-G-1234 と Buffalo-A-1234 だったとすると、Buffalo-G-1234-2 と Buffalo-A-1234-2 みたいなやつも利用可能な Wi-Fi 一覧に出てくるのである。

これは何かのバグなのかもと思ったのだが、ネットを検索してみると、どうやらこれは正常であるらしい。解りやすく言うと、ルータは複数の種類の電波を吐いているということだ。

それで、まあ機器にもよるのだけれど、大体はこの両方に接続できるみたいだ。

しかし、ふと気がついてみると、それだけではなかった。そこには新しく買ったルータの説明書に書いてあった SSID も現れていたのである。

つまり、SSID 引き継ぎ機能というのは新しいルータの SSID と暗号化キーの組合せを古いルータのそれで上書きするのではなく、新たな組合せをひとつ書き加えているというだけのことだったのだ。

確かに新機の元々の SSID を選んで、マニュアルに記載されていた暗号化キーを打ち込むとちゃんと Wi-Fi に繋がるのである。であれば新しいほうに切り替えたほうが良さそうな気がして、せっかく一括で旧設定を引き継いだにもかかわらず、全ての機器を新しい Wi-Fi に繋ぎ変えることにした。

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Saturday, December 18, 2021

ルータ買い換え

【12月18日 記】 ルータを買い換えた。Wi-Fi6規格。

今使っているのは何かと言うと、まだ Wi-Fi5とか6とか言ってなかった時期の Wi-Fi4、IEEE802.11n である。その前は IEEE802.11a, 11b, 11g にしか対応していなくて、そろそろ機器側が n に対応してきたなと思って買ったのが5年前だ。

だから、今回は Wi-Fi5の 11ac を飛び越して 11ax に昇格したわけだ。

実は、ルータを買い換えると、接続していた機器の設定を全てやり直すのが面倒くさいなあと躊躇していたのだが、友人から今のルータは設定(SSID と 暗号化キー)を引き継げると聞いて、それならと踏み切ったのだ。

AOSSボタンがある限り、確かに前の設定を引き継ぐのであれば超簡単である。いくつかの段階を経て数分後には僕の PC もプリンタもテレビも僕と妻の iPhone も全て繋がった。機器側で何もしなくて良いのは非常に楽だ。

ところが、1台だけ、妻の PC が繋がらない。利用できるネットワーク名のところに SSID が出てこないのだ。いろいろ調べてもハード的にはどこにも問題がなさそうなのだが、繋ぎ先が見つからないとなるとお手上げである。

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Friday, December 17, 2021

痛み2題

【12月17日 記】 1年半ぶりに心臓に違和感を覚えた。

すわ狭心症再発か、薬を飲み始めてから完全に治まっていたのになんで?

と思いながら、自分でくよくよ考えている間はドキドキ、ズキンズキンとしていたのが、妻に「最近また時々心臓が痛いので病院に行ってくるわ」と話した辺りから落ち着いてきて、前に診てもらった先生の予約を取った辺りからほとんど下火になってきて、心臓CT検査を受けて心臓には異常なしの診断をもらって以降は症状が雲散霧消した。

心臓や血管に異常はなくても何らかの原因で心臓が痙攣を起こすというようなことはあるのだそうで、例えばその原因がストレスであるとか、不安などの精神的な影響であることもあるのだそうだ。

もうひとつ言えるのは、果たしてそれは本当に心臓の痛みなのか?ということ。例えば肋間神経痛であるとか逆流性食道炎とかによる痛みなのか心臓の痛みなのかということは、却々医者にも見抜けないとのことであった。

それで今回はニトログリセリンを処方してもらって、心臓が痛くなったらそれを舐める。それで症状が改善すれば心臓や血管によるもの。そうでなければ他の原因か、あるいは他の部位の痛みということになる――それを見極めることになった。

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Tuesday, December 14, 2021

最近の物忘れ

【12月14日 記】 最近、朝やることが多くて忘れて仕方がない。

何歳のときだったか忘れたが、あるとき医者に「あなたぐらいの年齢になったらそろそろ血圧計を買って毎日計ったほうが良い」と言われて、それ以来毎朝血圧計を使うようになった。

ずっとそれだけだったのが、コロナ禍が始まったことにより、毎朝体温を計測して当日の勤務予定(出社なのか在宅なのか)と合せて報告しろと会社が言ってきた。

これはしかし、馬鹿らしくなってやめてしまった。当初は所定のフォームの体温欄に一定範囲内の数値を記入しなければ送信できなかったのだが、さすがに会社も反省したのか、いつからか空欄でも送れるようになったので、それに便乗してやめたのだ。

しかし、体温を計らなくなると、ついつい一緒に勤務予定を送るのを忘れてしまう。体温を計ったり勤務予定を送ったりするとついつい血圧を計るのを忘れてしまう。

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Sunday, December 12, 2021

買い替え

【12月12日 記】 なんか、年を取ってくると、電化製品にいっぺんにガタが来て、買い替えの時期が一挙にやってくるような気がする。

洗濯機も冷蔵庫も妻の PC もそれぞれに調子が悪く、そろそろ買い替えるべきなのは間違いない。

しかし、よく考えてみると、これは年を取ってくると思い切って買い替えないようになったからなんだなと気づいた。つまり、今までだったら例えば洗濯機は一昨年に、冷蔵庫は昨年に買い替えていたはずなのだ、多分。

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Saturday, December 11, 2021

映画『梅切らぬバカ』

【12月11日 記】 映画『梅切らぬバカ』を観てきた。古い一軒家に暮らす母ひとり子ひとりの家庭を描く。ただし、息子は50歳手前で自閉症である。老いた母・山田珠子を加賀まりこが、息子・忠(チュウ)さんを塚地武雅が演じている。監督は和島香太郎という人。

塚地武雅はこう言っている:

この作品を通して、自閉症の方の性格や行動を学び少しでも理解すると接し方が変わるのではということに気づかせてもらいました。

一方、加賀まりこはこう言っている:

私の息子(筆者註:加賀まりこの現在のパートナーの息子が自閉症とのこと)のことや、自閉症のことを何も分からなくていいんです。理解してもらいたいという映画ではないの。(中略)映画を観終わった人が、私の息子、忠さんのことを好きになってくれたらいいなって思います。

さすが、加賀まりこ。器が違う感じがする。この映画はともすれば自閉症の中年男を演じた塚地に注目が集まりがちだろうが、これは紛う方なく加賀まりこ主演の、加賀まりこの映画である。

監督の和島は加賀にそんな息子がいることも知らずに役柄をオファーしたらしい。そして、加賀に「あんた直すの下手ね~」と何度もダメ出しされて、漸く台本が完成し、台本が完成して初めて出演を許諾してくれたと言う。

まさに加賀まりこの映画である。昔から巧い女優だと思ってきたし、こういうきっぷの良い婆さん役は加賀まりこにうってつけである。そしてタイトル通り、梅切らぬバカを描いた、梅切らぬバカに対して愛情たっぷりの映画である。

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Thursday, December 09, 2021

ネックスピーカ元年

【12月9日 記】 コロナ禍が長くなってテレワークも長くなって、それに伴って世の中も変わって仕事のやり方も変わって、リモート会議も減りそうな感じがない。夫婦揃ってそんな感じ。

で、イヤフォンやらハンズフリー・マイクやらヘッドセットやらいろいろあるのだけれど、いずれにしても耳をずっと塞いでいるとかなり疲れてくる。

それでネックスピーカを買った。肩にかけるやつ。僕の、と言うよりも、僕よりもはるかにリモート会議が多い妻用として。

ほんとは電器店ででも試用してみてから買いたかったのだが、お試し用のを、しかも複数を比較できるような形で置いているような店はなく、仕方なくネット上のレビューを読んで選んだのが今日届いた。

SONY の SRS-NB10 である。クーポンを持っていたので SONY のオンラインストアから買った。

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Sunday, December 05, 2021

『残像に口紅を』筒井康隆(書評)

【12月4日 記】 今年になってから誰かが TikTok でこの小説を取り上げたら、それが評判になって、1989年に出た小説が今ごろベストセラーになったと言う。

僕はこの小説のことは知っていた(ということは、発表時には多少評判になったんだろうか?)が、読んではいなかった。それで、まあ、良い機会だからということで Kindle版を落としてみた。

皆さんすでにご存知かと思うが、日本語から順番にひとつずつ音が消えていったらどうなるかという小説。ひとつずつと書いたが、いっぺんに2音が消えることが多い。

さて、これはエッセイではなく小説であって、佐治勝夫という小説家が実際にそういう環境で書いている小説を僕らは読まされるわけだ。最初の章題は「世界から『あ』を引けば」。

「あ」と言えなくなると、例えば「愛」とは言えなくなる。では愛も消えてしまうのかと言うとそうではない。愛は他の言葉で言い換えられるからだ。でも「アルパカ」は多分言い換えようがないだろうから、世界からそういう動物が消えてしまうことになる。

「あ」などが消えたら大変だろうとついつい僕らは思ってしまうのだが、しかし、章題を読み飛ばしていたら(実際僕がそうだった)最初の章で一切「あ」の付く言葉が使われていないなんて全く気がつかない。何の差し障りもないスムーズな文章なのである。

で、佐治は友人でありフランス文学の教授である津田得治といろいろ構想を話しながら、この小説をまとめ上げて行く。そういうわけで「つ」「だ」「と」「く」「じ」の5音はなかなか消える順番が回ってこない。これらが消えた時は津田得治が小説内から消える時だから。

大したもんだと思うのは、5音や10音が消えたぐらいでは作家はびくともしないということだ。この場合の「作家」はもちろん小説を書いている佐治勝夫ではなく、佐治勝夫を書いている筒井康隆のことだが。

ところが、第一部も終盤になってくるとさすがに窮屈になってくる。筋もまともに進められなくなってきた感がある(わざとそういう風に仕向けているのではあるがw)。そこで佐治は津田の勧めで、学生時代に佐治を慕っていた若い女性と自分の情事を唐突に描き始める。

これがまた笑うぐらい、純然たるポルノ小説なのだ。そんなこと聞くとなんか読む気がなくなるという人もいるかもしれないが、こりゃ本当に面白い。だって、言葉の不自由さを逆手に取って筒井康隆が遊んでいるのである。そう、嬉々として。

彼は今までこんな小説を発表したことはないのではないだろうか。

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Saturday, December 04, 2021

映画『EUREKA 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』

【12月4日 記】 映画『EUREKA 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観てきた。Eureka_3brochures

2017年に始まった映画版の最終作。本当は毎年1作ずつ公開のはずだったが、第2作が公開された後、コロナも含めていろいろな問題から制作が遅れ、今年漸く完結編にたどりついた。

僕はその間まだかまだかと首を長くして待っていたのだが、何しろ何を観てもすぐに忘れてしまう僕である。3年も間が空いたらほとんど何も憶えていない。

そんな状態で映画が始まると、地球上にいきなりグリーン・アースという地域と言うか、人たちと言うかが現れてきて、それが従来からの地球人(及び居住空間)であるブルー・アースと敵対し、やがて協定を結んで共存し始めるのだが、この辺の説明があまりにコンパクト&スピーディで、そもそもが複雑な設定の物語だから難しくてついて行けないのである。

えっと、この人たちはブルーだっけ、グリーンだっけ? で、今これは何と戦っているのか?…等々。

それでも必死で物語を追っていると、少しずつ分かってきて、最後には(変な言い方だが)たとえ一知半解な部分が残っていても、やみくもに理解点に達してしまい、やみくもに大きな感動に包まれてしまう。それはひとつには圧倒的な作画能力によるものだ。

今作は完全新作で、前2作のようにテレビ版の素材を再使用したりはしていない。このブログにも書いたが、今シリーズの最初のほうでは、同じ絵を使いながら人物の設定やストーリーが全く違っていたりするのが、従来のテレビ版のファンにとっては少し気持ちの悪い、馴染めないものだった。

それが作を重ねるごとに新しい映画版の世界がしっかりと定着してきて、今作を観るときにはそういう思いは全くなくなっていた。僕は第2作の記事にこんな風に書き綴っていた:

でも、ひょっとするとあのテレビシリーズは、今日の映画の中で言っていた、エウレカがたくさん見た夢のひとつだったのかもしれない。

そう、そのぐらい新しい世界観がしっかりと立ち上がってきていたということだ。ただ、テレビ版の記憶が多少残っていたりもして、映画版の前作の進み行きとごっちゃになって混乱するようなことも多少あるにはあったのだが(笑)

その辺は、帰宅してから過去2作のパンフレットを読み返し、今作のパンフレットも読み終えて、漸く思い出したと、言うより理解した。アネモネがエウレカを救い、連れ出したことによってスカブコーラルは消滅し、その代わりエウレカが生み出した仮想世界がグリーン・アースとして現出したのである。

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Wednesday, December 01, 2021

病気自慢

【12月1日 記】 年寄りが病気自慢をするのは、それ以外に変わったことがないからなのだなと、最近分かってきた。トピックスというのはきっと“変わったこと”を指しているのだ。

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