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Friday, November 05, 2021

映画『ほんとうのピノッキオ』

【11月5日 記】 映画『ほんとうのピノッキオ』を観てきた。1883年にイタリアで出版された『ピノッキオの冒険』をイタリア人のマッテオ・ガローネ監督が映画化したもの。

予告編を観て、これは是非とも観たいと思い、妻も気に入るだろうと思ってチラシを持ち帰ったら、彼女も一瞥して即観たいと言った。

「美しくも残酷なダークファンタジー」という宣伝文句が想起させるほと怖いシーンはないし、怖い映画でもなかったが、その一方で『ほんとうのピノッキオ』という邦題はよくつけたものだと感心した。

ここにあるのはディズニーが良い子ぶって美化した小ぎれいなおとぎ話ではない。こちらがほぼ原作通りのピノッキオなのである。僕はディズニー版を観たわけではないが、それでもディズニー版がちゃんちゃらおかしくなる。何が When you wish upon a star だ!

ジェペット爺さんは貧乏だけれど品行方正な木工職人ではなく、知り合いを騙してでも何とかタダ飯を食おうとする、さもしい貧乏人である。爺さんが彫ったピノッキオは良い子なんかじゃなく、親や先生の言うことを聞かない、如何にも子供らしい嘘をつきまくる悪ガキである。

でも、ジェペット爺さんはピノッキオがいきなり喋りだしたのを聞いた途端、嬉しさのあまり外に出て、街中に「子供ができた」と騒ぎまくる。奥さんもいないのに、である。その変な無邪気さが狂気のようでもあり、しかし、観客の心を惹きつけるのである。

爺さんがベッドカバーを切って縫った洋服を着せられ、爺さんが自分のコートと上着を売って買ってきた教科書を持たされて、ピノッキオは学校に行かされるが、登校したフリをして、爺さんがいなくなった途端に人形芝居小屋に行って、木戸銭がなかったので教科書を売り飛ばしてしまう。

その後人形一座の親方に拐われたり、詐欺師に金貨を奪われたり、遊び呆けているうちに魔法をかけられてロバになってしまったり、何度ひどい目にあっても全く懲りない。嫌なことは避けて、楽しそうなことがあるとすぐに飛びつき、親身になってくれるおしゃべりフクロウや妖精を平気で裏切る。

こんな風に理路整然とまとめてしまうと、そういう映画かと思うかもしれないが、実際に観てみると、ストーリーにあまりに脈略がないのに驚いてしまう。そして、それこそが子供の感性なのかなという気がしてくる。

僕ら大人はついつい一つひとつのものを積み上げて整合性のある意味の到達点に立とうとするが、子どもたちの体験というのは、ほんとうは全く関係のないいろんなことがバラバラに巡ってきて、そのうちのいくつかがいつしか突然ほんわりとまとまってくるのではないか。

人間の子供になりたいと願っている木彫りの人形が最後にどうなるのかは誰にでも容易に予測ができる。だが、この映画はそこに至るまでの描き方がすごいのである。この物語は僕らの思い通りには進まない。

妖しい!おかしい!危ない!アホかお前は!なんじゃそりゃ!と僕らを唸らせておいて、映画はつるんっと収束して行く。

特殊メイクの巧みさやロケとカメラワークの美しさなどもあるが、この全体のトーン・コントロールは見事なものである。いやあ、面白かった。

ハリウッド以外の洋画を観ると、その独特の感性に魅入られることがある。ほんとうに面白かった。夢に出てきそうである(笑)

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