『知識ゼロでも楽しく読める!統計学のしくみ』佐々木彈監修(書評)
【11月13日 記】 この本はタイトルが『統計学のしくみ』で、「知識ゼロでも楽しく読める!」が肩タイトルということになるのだろう。まあ、その通り、楽しく読める。それは嘘ではない。
表紙には他に2つのキャッチフレーズめいたことが書いてあって、ひとつは「『むずかしくて無理!』だった人もこれならわかる!」で、もうひとつが「明日話したくなる統計学の話88」である。
後者のフレーズは、まあ、読者の資質にも依るけれど、あながち誇張ではないと思う。しかし、前者はどうだろう? 各項目の説明は大体が見開き2ページで完結していて、確かに平易な表現にはなっているが、2ページで解れと言われるとちょっとしんどい。
つまりこの本は読み物寄りの専門書ではなく、純然たる読み物に近い。
あまり数式を使わず、言葉と図式で説明しようとする意図はよく分かるが、それで達成できるのは、まあ、このぐらいかな、という感じである。
だから、例えば何かの資格試験に統計学の知識が必要だから勉強しなければ、という人の教科書になり得るかと言われると、この本はそういう本ではない。ただ、サブ・リーダーにはなる、と言うか、そういう読み方が一番ふさわしいのではないかな。
- 僕でも知っている著名な国文学者の大野晋が統計を用いて古典文学の語彙の偏りの法則を発見していたとか
- ギャンブルのセット回数を積み重ねると“浮きっぱなし”と“沈みっぱなし”の現象が極端に増えるとか
- 3つのサイコロを投げて3つの目の合計が 9、10 になる出方はともに6通りだが、実は目の合計が 10 になる確率のほうが高いとか
- 精度99%の検査で1万人に1人の割合で人間に感染するウィルスに感染しているという結果が出た時に、本当に感染している確率は1%に満たないとか
そういう話は確かに明日誰かに話したくなる。話したくなるよね? だったら読んでみて。
これはそういう本なのである。
前に書評を書いた『難しいことはわかりませんが、統計学について教えてください!』みたいな本と合わせ読んで、その両方を理解/習得すれば万全だろう(笑)
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