映画『君は永遠にそいつらより若い』
【9月25日 記】 映画『君は永遠にそいつらより若い』を観てきた。僕はほとんどの映画をまず監督で選んでいるが、今回はそうではない。狙いは奈緒だ。
奈緒はもう少し前からいろんなテレビドラマで注目を浴びてきたらしいが、僕はどれも見ていなくて知らなかった。去年 KTV の『姉ちゃんの恋人』で主演の有村架純の親友役をやっているのを見たのが初めてで、こんなに上手くてこんなに魅力に溢れた女優がいたのか!と一気に好きになった。
だが、この映画は奈緒が主演ではない。主演は佐久間由衣だ。名前にも顔にも記憶があった。調べたら彼女が出演した映画を2本見ていたが、印象は残っていない。
この映画では、佐久間由衣が演じる大学4年生・堀貝佐世と同じ大学だが学部は違っていて、学年も1年下の猪乃木楠子が奈緒の役だ。猪乃木はひょんなことから学内で堀貝と知り合い、やがてなんとなく惹かれ合い、静かな友情が育まれて行く。
原作は津村記久子のデビュー作(当初は違うタイトルだったようだ)。津村記久子は大阪出身の芥川賞受賞作家だが、僕は読んだことがない。ちなみに今は僕が務める放送局の番組審議委員会の委員だったはずだ。
原作がそうなのか、今回の脚本や演出がそうなのかは分からないが、如何にも頭で考えましたという感じの話で、作り物感が強い作品だ。逆に言うと、如何にも大学生らしい頭でっかちな感じをうまく出しているとも言えるのだけれど。
堀貝は東京の大学に通う4年生で、故郷の和歌山の役所に児童福祉司としての就職が決まっており、単位もほとんど取っていて卒業の心配もない。あとは卒論を書くだけである。
だが、彼女は自己肯定感がものすごく低い。なんでも自分の責任のように思ってしまう。いまだに処女であるのことを恥ずかしいとは思わないし隠してもいない一方で、処女の自分を欠陥品のように感じているのも確かだ。
映画の中では描かれていなかったが、170cm の長身であることもコンプレックスのひとつなんだろう。
猪乃木はなんとなく暗い感じはあるが、屈託や偏見を感じさせない素直な女の子だ。堀貝も猪乃木もともに両親が離婚している。猪乃木は両親の離婚の後、小豆島に住む祖母に預けられて、そこで育った。
そんな設定の中で、堀貝がコンパの席で一緒になってちょっと惹かれたホミネ君(笠松将)、バイト先の後輩・ヤスダ君、ホミネと堀貝の共通の友人・ヨッシー(小日向星一)らとのいくつかのエピソードが語られる。
そして、それらひとつひとつが堀貝の自己肯定感をさらに下げることになる。
冒頭にも書いたのだけれど、その辺りの展開が、堀貝の自己肯定感を下げるという前提で一生懸命考えられたような印象があって、あまり刺さって来ないなあと思って見ていたのだが、最後にはちょっと大きな事件も起こして、それなりに観客を惹きつけてはくれる。
で、僕が目当ての奈緒はと言えば、それほど感情の起伏を外に出さない役ではあった。しかし、自分も壊れながら堀貝を癒やすという、観ていると自然と惹かれてしまう役柄で、派手な目立ち方はなかったが、やっぱり巧いし魅力的だと思った。とても良い女優だという認識を新たにした。
そして、主演の佐久間由衣も非常に良かった。この2人の力演によって、それなりに良い映画に仕上がったと言って良いのではないだろうか。
ちなみに、いつもどおりパンフレットを買い求めたら、厚さ 2cm もある文芸誌なみの本で(当然決定稿台本はそこに採録されている)、パンフレット代のほうが映画のチケット代より高くて驚いた。
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