映画『サマー・オブ・ソウル』
【9月19日 記】 映画『サマー・オブ・ソウル』を観てきた。本来は 7/2 の封切り予定だったが、コロナで公開日が 8/27 に延びた。
随分前からマークしていた映画なのだが、僕が邦画を何本か先に観ている間に評価が高まって人気が沸騰したらしい。パンフレットは売り切れていた。
奇しくも去年の今日は『メイキング・オブ・モータウン』を観ていた。 2年続けて 9/19 はブラック・ミュージックの日だ。ただし、こちらはモータウンだけではない。ブルーズ、ソウル、ジャズ、ゴスペル、モータウン・サウンド、そしてラテンまで!
ウッドストックと同じ日にこんなブラック・ミュージックのフェスが NY のハーレムの公園で開かれていたとは全く知らなかった。そして、その開催中にアポロ11号が月面着陸していたとは(日本人にとって月面着陸は深夜のイメージだったし)。
長らく眠っていた、と言うより葬り去られていたこのフッテージを1本の映画に仕立て上げるのに、これを単なる記録映画に留めなかったのがすごいと思う。ものすごい編集である。
歌と演奏の間に当日の出演者や観客のインタビューが入る。ニュース映像もインサートされる。でもミュージックは途切れずオーバーラップしている。映像同士も時々オーバーラップしている。どれだけ大変な編集だったろう。いや、その前に素材を全部見るだけでもものすごい時間がかかったはず。
始まってすぐにスティービー・ワンダーの怒涛のドラム・ソロがある。キーボーディストというイメージしかなかったので、これには驚いた。
B.B.キングは大人になってから知ったが、ザ・フィフス・ディメンションやグラディス・ナイト&ザ・ピップスはリアルタイムでヒット曲を聴いた記憶がある。5thディメンションはこんなに踊りながら歌っていたのかと驚く。16ビートに乗って暴れまわるベースのサウンドが如何にも60年代だ。
僕の一番の目当てはステイプル・シンガーズ、とりわけメイヴィス・ステイプルズだ。これだけの声をしたシンガーを僕は寡聞にして知らない。ハイライトはマヘリア・ジャクソンとのデュエット。誇張でもなんでもなく、聴いているだけで涙が出そうになる。
スライ&ザ・ファミリーストーンの作品をまともに聴いたのは今回が初めてだった。そして、ニーナ・シモンもそうだが、そのメッセージ性の強さに驚いた。
思えば彼らの音楽は、とりわけ排斥された境遇にあった彼らの音楽は、宗教や政治や社会問題と無関係ではあり得なかった。music が movement であった時代なのだ。日本ではそれは今や影も形もない歴史的事実でしかないが。
そういうところにしっかりと視点を置いているからこそ、今回のような編集をして、今回のような作品に仕上がったというわけだ。
素晴らしかった。これは Blu-ray Disc を買っても良い。
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