映画『妖怪大戦争ガーディアンズ』
【8月15日 記】 映画『妖怪大戦争ガーディアンズ』を観てきた。
三池崇史という人は当たり外れの大きい映画監督だと思う。でも、この映画はそんなことどうでも良くて、何が何でも観るのである。
過去、ゲゲゲの鬼太郎の実写映画も2本観ているが、別に鬼太郎ファンというわけでもない。ただ、妖怪大戦争が好きなのだ。16年前の『妖怪大戦争』(同じく三池崇史監督)も観ている。
何十年も前のテレビアニメ版の『ゲゲゲの鬼太郎』でも妖怪大戦争の回があった。西洋の妖怪たち(もう定かな記憶はないが、多分魔女とか吸血鬼とか狼男とかだったと思う)が日本に攻めてくる話である。
迎え撃つ日本側は子泣き爺、砂かけ婆、ぬりかべ、一反もめん+鬼太郎という面々で、西洋陣に比べるとめちゃくちゃ弱いのである。敵におぶさって泣いてみたり(だんだん重くはなるのだが)、敵に砂をかけたり、敵の前に立ちはだかったり、ぐるぐる巻にして締め付けたりしてもほとんどダメージを与えられない。
あゝ、このままでは負けてしまう。もう頼りは鬼太郎だけだ!とハラハラしながら観た。
そもそも日本の民話などに出て来る妖怪たちはせいぜい人を驚かせるぐらいで、それほど暴れるということがない。前作『妖怪大戦争』にも今回の映画にも出てきた小豆洗いなどはその最たるものである。で、前作でも今作でもこの小豆洗いをナインティナインの岡村隆史が好演している(笑)
前作もそうだったのだが、なにしろ特殊メイクがきつすぎて、誰が誰だがほとんど分からない。すぐに分かるのは頭部以外はすっぴんに近い岡村ぐらいである。
前作では忌野清志郎がぬらりひょんを演じていたのははっきり覚えているのだが、亡くなってしまったこともあって、今回は大森南朋だ。そしてもうひとりの大物妖怪・隠神刑部に扮しているのは大沢たかおだ。
ここまでは事前に知っていたから分かったが、他は皆目見当がつかない。九尾の狐は声が絶対杉咲花だと思ったが、顔のアップを見ても確信が持てない。天邪鬼は EXIT のりんたろーかと思ったら赤楚衛二だと後から知ってびっくり。あの甘いマスクの2枚目がこんな顔になるのか!
髪の毛とお歯黒だけのメイクで姑獲鳥を演じた安藤サクラ(こんな映画でもやっぱり抜群に巧い)はさすがに分かったが、雪女の大島優子が分からない。天狗なんぞはパンフで三浦貴大と知って仰天した。
あと猩々の大倉孝二は途中で気がついたが、ちょろっとしか映らない遠藤憲一や石橋蓮司、HIKAKINらを見破るのはとても無理だ。
ところで、映画の出来のほうはと言えば、これがなかなか悪くない。特撮とか CG とかが高レベルであるという前提があってのことだが、それだけではない。
今回の映画でも日本の妖怪たちはあまり戦闘に長けていないという前提で作ってあって、まずその発想が面白い。
今回の敵はフォッサマグナで化石となっていた古代生物が海に戻りたいという一心が呪いとなって、それが結集して巨大な妖怪獣となったもの。日本の妖怪たちは国際会議で外国の妖怪たちに支援を求めるが誰も応じてくれない。
妖怪たちは仕方なく、1000年前の妖怪退治で名高い武将・渡辺綱(北村一輝)の子孫である渡辺ケイ(寺田心)・ダイ(猪股怜生)兄弟に白羽の矢を立てる──ちょっと端折りすぎたけど、まあ大体そんな感じの話だ。
今回はあの大魔神が加わるから勝てるんだろうか?(しかし、映画の中では大魔神という呼称が一度も使われていなかった。東宝+KADOKAWA では大映映画の魔神の名前は使えなかったのか?)
で、いろいろあるのだが、最後は唐突になんだか闇雲に舞台演劇的なカタルシスに持ち込んで、ドサクサ紛れみたいに解決する(笑)──こういうの、僕は大好きだ。
その場面で使われた楽曲が、どうも常人に作れそうな歌ではないなと思ったら、作詞が荒俣宏で作曲が東儀秀樹と知って納得。
おまけに前作の映画の、言わば発起人のひとりであった荒俣宏は、この映画では角川歴彦とともに製作総指揮に名前を連ねており、加えて妖怪のひとりとして出演もしている。東儀秀樹も3人の東儀秀樹役で出ている。前作の主演だった神木隆之介も曰くありげな小学校教師役で出ている。
この辺りがまことに楽しい。あー、ほんとに楽しかった。みんなが楽しんで作っている感じが伝わってきて、こちらまで楽しくなる。
主演の寺田心の演技がまるで学芸会だったのにはほとほとげっそりしたが、弟役の猪股怜生は良かった。
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