ポケット・ティッシュがありません!
【8月6日 加筆修正】映画『老後の資金がありません!』のマスコミ試写に行った日、帰宅して身の周りのことにふと気がついた。
そう、今や目先のコロナが気になって老後のことまで意識が及ばないのだが、僕が気づいたのもものすごく卑近なこと:
我が家にはポケット・ティッシュがありません!
正確に言うと、在庫は1つだけあったのだが、それが最後。自分のデスクに置いているポケット・ティッシュ・ケースも空になったままだ。
昔はポケット・ティッシュのストックなんて山のようにあった。街を歩いているだけでいっぱいもらえたからだ。あんまり家の中に溢れてくるものだから、むやみにもらわないようにした時期もあったぐらいなのに。
何故こんなにもらえなくなったのだろう?
ひとつには僕が年を取って、悲しいかな、いろんな商売のターゲットから外れてきたので、チラシの配布対象からも外れてきたということがある。
あつかましく手を出して「ください」と言うこともできなくはないが、以前聞いた話が怖くてそんなことをする勇気がない。それはこんな話だ:
ある中年男性が歩いていると、ティッシュか何かを配っている女性がいる。自分ももらえるかと思って前を通ったが見事にスルーされてしまった。立ち止まって振り返って見てみると、若い女性にばかり配っている。なんだか不愉快ではないか。
それで彼は配っている女性のところに戻って、手を差し出して「俺にもくれ」と言った。言われた女性は目を見開いて驚いた表情をしたが、黙って彼に小さなパッケージをくれた。それは生理用品のサンプルだった。
ね? 怖いでしょ。そういうわけで、何かをサンプリングしている人が自分だけをスルーしても下手に動かないほうが身のためなのである。それでたとえ僕のもらえるポケット・ティッシュの数が減ったとしても。
さて、我が家のポケット・ティッシュが減っているのは僕がもらえなくなったからということもあるにはあるが、そもそもチラシ付きのティッシュ配りが減っているという事実もある。広告手法としてはどう考えても効率が悪いからだ。
例えば CPM(あるいは CPA でも CPO でも、どんな広告指標でも良いのだが)を計算すると、チラシ付きのティッシュはテレビのスポット広告よりも遥かに効率が悪い。ラジオや新聞雑誌と比べても効率の点では明らかに見劣りする。
しかし、だからと言ってマス広告を打つとなると、まずもって結構な額の予算が必要になるし、考査は厳しいし、そもそもエリアが広すぎるというような問題もあって、やっぱり手軽な“ティッシュ配り”辺りに落ち着いたりもしていたのだろう。
しかし、今はネットでいろんな広告ができる。低予算から手軽に、いろんな形態で、しかもターゲットを絞って広告が打てるようになった。どう考えてもチラシ付きのティッシュじゃ割が合わなくなってきた ⇒ ネットでもやってみるか、みたいな動きもあるんじゃないかな。
そして、それに加えて、最近ではコロナの影響がある。
人出が減ったのでそれほど大量に撒けなくなって、効率が更に悪くなってきたという面もあるだろうし、今は誰もが接触を避けようとしており、他人が触ったものに安易に触りたくないと思っているので、渡そうとしても受け取ってくれないという面もあるだろう。
というような複合的な背景と原因によって、我が家のポケット・ティッシュはあと1個というところまで来てしまった。
崖っぷちである。ないとちょっと困るのである。持ち歩くのはもちろん、家の中でも小さなケースに入れてデスクに置いておくと何かと重宝したのである。
しかし、まあ、洟をかむのであれば箱入りのティッシュで充分だし、最近だとむしろアルコールなどを含ませたウェット・タイプのティッシュ(ノンアルコールのタイプもある)のほうがいろんな用途に使えて良いのかもしれない。
ならば、もう、ポケット・ティッシュは要らないか
とも考えたのだが、ちょっと待て、外出先のトイレにペーパーが備わっていなかったケースを考えると、これはどうしても鞄の中に1つは入れておきたい。ウェット・ティッシュで拭きたくはない。考えるだけでおぞましい。
ならばどうする?
ポ、ポケット・ティッシュを買うのか?
え? ずっとタダでもらえるものだと思ってきたポケット・ティッシュを俺は買うのか? そんなものにお金を使うのか?
でも、そういうことなんだろうな。そうしかないよな。
うん、昔は水は水道の蛇口をひねればタダで飲める(もちろん水道代は払っているが)と思っていたのが、今ではペットボトルに 100円ぐらい平気で払っている。それと一緒だ。
それと一緒だ、と自分を慰める。
で、妻にポケット・ティッシュがもう1つかないんだと言ったら、今日「買ってきたよ」とにこやかに帰ってきた。そうか、君にとってはそれほどショックなことではなかったんだね。
今我が家にポケット・ティッシュは5つある。鞄の中に入れたやつがなくなったら、まずひとつを鞄に移そうと考えている。
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