『ネットフリックス vs. ディズニー ストリーミングで変わるメディア勢力図』大原通郎(書評)
【6月10日 記】 動画のストリーミング・ビジネスを軸に新旧のメディアの全体的な動きを綴った本である。そこに『ネットフリックス vs. ディズニー』などというメインタイトルをつけるのは、如何なものだろう。
この本の観点は必ずしもその2社には絞られておらず、もっと全方位的な概観を記録したものである。
恐らく『ストリーミング・メディア概観』みたいな穏やかなタイトルを付けるよりも、抗争の内幕でも暴露しているのではないかと思わせる扇情的なタイトルにしたほうが売れるだろうという、出版社の浅知恵なのだろうなと想像する。
そういう意味で「羊頭を掲げて狗肉を売る」感じのタイトルなのである。しかし、狗肉は食えないかと言えば必ずしもそうでもない。
僕は同じ業界にいるので、ここに書いてあるようなことについては大体大きな流れや傾向は把握している。ただ、どこかで多分一度は読んでいるのだけれどすっかり頭の中から消えている事例も多く、こんな風に俯瞰的にまとめてくれるのは大変ありがたい。
決して「買って損した」「読むんじゃなかった」というような本ではない。地味に仕事に役立つ本である。こういう本でもう一度事実を押さえておくのは良いことだ。
ただ、ここに書いてあるのは、ひどい言い方をすれば単なる事実の羅列であって、そこに著者独特の見方や、分析、解釈、予測などがあるかと言えばそういうものはあまり見当たらないので、とりたてて面白い本でもないのは確かである。
そこで考えるのは、こういう本は、インターネットやテレビなどのメディアとは全く関係のないところで働いていて、全く知識がなかった人が読んだらどう思うのだろう?面白いのかな?ということである。
すでにお読みになった方、どうです? 面白かったですか?
Comments