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Monday, June 21, 2021

『大豆田とわ子と三人の元夫』と『コントが始まる』

【6月21日 記】 今クールは『大豆田とわ子と三人の元夫』、『コントが始まる』、『ドラゴン桜』と3本もプライムタイムのドラマを観て、それ以外にもまだ観ていた深夜ドラマもあって、結構忙しかった。

で、『大豆田とわ子と三人の元夫』と『コントが始まる』は最終回まで見終わって、この2本が双璧だったなあと思う。

そう、『ドラゴン桜』は面白かった(まだ続いてるけど)が『大豆田とわ子と三人の元夫』はそれより遥かに面白かった。そして、『コントが始まる』はもう死ぬほど面白かった。この2本が今期の、いや今年の、いや令和の、いや今世紀の双璧だったと言っても良い。

『大豆田とわ子と三人の元夫』は、その設定を見るとかなり作り物感のある、ある意味奇を衒った作品だった。だが、その会話は日常生活から浮いたものだったかと言うと全くその逆で、ある意味僕らの生活に溢れているバカ話で構成された物語だ。

岡室美奈子はこのドラマを「慎森が雑談できるようになるまでの物語」とまとめていたけれど、彼女の分析の通り、全てのストーリーは雑談を中心に進められる。

雑談を繋いで作ったようなドラマだから、とわ子の親友かごめが死ぬところも、とわ子が小鳥遊と別れるシーンも描かれない。視聴者は葬式のシーンになってやっと、「え? かごめは死んじゃったの?」と気がつき、とわ子が「今お別れをしてきたの」という台詞を聞いて初めて、「え? 一緒にマレーシアに行くんじゃないのか?」と驚く。

そういう進行は確かに視聴者の予想を裏切ることを狙ったようにも見えるが、実はそんな小さなところを狙ったわけではないということは、最終回まで見た人なら納得できるはずだ。

このドラマは修羅場を描かずに喪失感を描き、くだらない雑談の中に生きる喜びを表したウルトラCだった。

一方、『コントが始まる』は売れないコント・グループの話で、しかも、高校卒業後10年間やってきた彼らがとうとう諦めて解散する物語である。並の作家なら、そんな設定のどこでカタルシスを得られる話が書けるだろうかと躊躇するはずである。

こちらも、この3人のバカ話が中心だ。それにコントのネタをうまく絡めてある。3人にはそれぞれ家庭の事情もあって、必ずしもハッピーな毎日ではない。でも、そのコント・グループ“マクベス”の大ファンになって、それを生きる糧にさえしてくれる人がいる。応援してくれる人がいる。

しかし、それをお涙頂戴にはしない。

菅田将暉、仲野太賀、神木隆之介、有村架純、芳根京子、古川琴音という、概ね同世代の(古川は少し下だが)まさに一流どころのキャストを集めて、そのバカバカしい会話のなんと自然でおかしいことか。脚本があって喋っているとは到底思えないくらいだ。

そして、この負けゲームの中で3人のメンバーたちは、そして、この負けゲームの行方を毎週追ってきた視聴者たちは、泣いて笑ううちになんか生きる力を得ていくのである。大切な大切なドラマになった。

いずれにしても、坂元裕二も金子茂樹もとんでもない脚本家である。今回は「やられた!」感が非常に強い。

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