« 旅行に行けない黄金週間 | Main | 『his』 »

Tuesday, May 04, 2021

映画『FUNNY BUNNY』

【5月4日 記】 映画『FUNNY BUNNY』を観てきた。大好きな飯塚健監督・脚本・編集。元が舞台だったと言うから当然なのだけれど、とても演劇的な映画。とりわけ台詞回しが演劇的。

最初のほうに「想像力があれば世界を変えられる」みたいな台詞があったが、まさに想像力が横溢した設定と展開である。

閉館間際の区立図書館をバニーの着ぐるみ頭部をかぶった 25歳の剣持聡(中川大志)と 24歳の漆原聡(岡山天音)が襲撃する。司書の服部(関めぐみ)と利用客の新見(レイニ)を結束テープで縛り上げて。

目的は“絶対に誰にも借りられない本”を探すこと。

ちなみに僕はこの「られる」を可能の意味に取っていたのだが、そうではなくて受け身の助動詞だった。つまり、「誰にも借りることができない本」ではなく「誰かに借りられたりすることがない本」だ。その裏には剣持の高校時代の同級生・田所(ゆうたろう)の死が絡んでいる。

しかし、図書館には遠藤(森田想)という利用客がもうひとりいたこともあって、剣持らの計画は頓挫。でも、彼らの話を聞いて他の3人も協力することになる。この辺りの展開は面白い。

冒頭の、剣持と漆原が図書館まで乗ったタクシーのくたびれた運転手(菅原大吉)とのやり取りから始まって、仄かにユーモラスな会話を折り込みながら人間の心の結構深いところまで触れてくる手法は『REPLAY & DESTROY』の線だなあと途中で気がついた。

ただ、こちらは人の生き死にが絡むだけに少しく重い。

で、映画の宣伝文句に「【図書館襲撃】と【ラジオ局電波ジャック】」と書いてあるように、後半にはもうひとつ別のエピソードが用意されている。図書館事件で襲撃側と人質側だった5人が結局意気投合してそのままつきあいが続いている4年後の物語。

服部の大学時代の同級生で、1曲だけ売れたバンドのフロントだった菊池(落合モトキ)が出てくる。こちらも人の生き死にが背景にある。ちゃらんぽらんでありながら、これ以上誰も死なせまいとする熱血、自称小説家の剣持の思いはストレートに伝わって来る。

主に会話劇で2ショットのアップが多いが、図書館をはじめとして結構きれいな夜の画が多い。撮影は小松高志。

前述の運転手や、剣持たちの行きつけの“隔日24時間営業”の中華料理屋のおやじ(角田晃広)らが、効果的に絡んでくる。伊藤沙莉もカメオ出演していたらしいのだが、気がつかなかった。

ガツンっと来るような映画ではない。でも、紛れもない飯塚健テイストの、却々良い映画だった。ここまで読んで分かる通り、飯塚監督馴染みの役者も大勢出ており、飯塚健のファンであれば断固として見るべし。

あんな大きな被り物をつけて猛然と駆けて行くバニーのなんと凛々しいことか!

緊急事態宣言下でも開けてくれたアップリンク渋谷に感謝したい。5/20 を以て閉館を発表しており、ひょっとしたらこれが最後になるかもしれないだけに、行って良かった。観られて良かった。

|

« 旅行に行けない黄金週間 | Main | 『his』 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 旅行に行けない黄金週間 | Main | 『his』 »