コード理論ふたたび
【4月25日 記】 先日、Play Log File on my Walkman #141 で尾崎亜美の『マイ・ピュア・レディ』について書いたときに、久しぶりにコード分析みたいなことをやったら、これが楽しくて楽しくて仕方がない。
きれいなコード進行だなと思って調べてみたら、G のキーに E♭が使ってある。記号で言うなら♭VI である。
ナニソレ、どういう発想で、どこからそんなコード持ってきたの?と思ったのだが、これは G の同主調、つまり、同じく G を主音とした短調のキー(Gm)からの借り物なのである。つまり、E♭は、キーG ではノンダイアトニックコードだが、キーGm ではダイアトニックコード(VI)なのである。
そういう関係で、このコードは借りて来られるのである。これは♭VI だけではない。♭III も ♭VII もまた同主調マイナーではダイアトニックコードであり、同様に使えるのである。
しかし、♭II7 が V7 の代用コードになるのははっきり憶えていたが、♭III、♭VI、♭VII が使えるなんてことは、多分何かで一度は読んでいるはずだがすっかり忘れていた。
さて、ここで使われている♭VI は半音下降して V7 に接続することが多く、『マイ・ピュア・レディ』でもその通りになっている(ただし、この曲では D7 ではなく Dsus4 になっている)わけだが、その前に F9 と Em を置いて4音の下降クリシェを作っているところが巧い。
キーG で F9 というのも、これまたどこから持ってきたの?というノンダイアトニックコードだ。
コード理論的には本来 Am7 ぐらいを充てておくのが無難で、それを変形した(第5音を半音下げた) Am7-5 もアリかな、という感じなのだが、その Am7-5 の下に F 音を加えると F9 になるという、これまた手品みたいな形だ。
そんなことを吟味すればするほど深い。
そして、そんなことを楽しむには良い時代になったのだ。
我々が若かった頃はコードを調べるには耳コピが主流だった。もし、楽譜が売っていたらそれを買ってくる手もあったが、楽譜というのはどんな曲でも売っているわけではない。だから、耳で聴いて弾いてみてを繰り返してなんとか正解に近づこうとするのだが、それは茨の道だった。
でも、今はある程度売れた曲であればネットで検索すればコード進行は必ず見つかる(楽譜になると有料になるが)。もちろん、サイトによって微妙に異なっていたりもするのだが、その辺りを比較検討するのも楽しい。
そして、昔はコード理論は本を買ってきて憶えて弾いてみてを繰り返して身につけるしかなかったのだが、今はネット上に親切な人がいろいろと解説してくれている。昔読んで一度は憶えたのに今ではすっかり忘れていても平気なのである。
そんな環境ができたからこそ、僕はこんな文章が書けるのである。
またもう一度コード理論を勉強し直そうかなと、そんな気にさせてくれる時代が来た。とても楽しい。とても嬉しい。
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