NHK BS 『わが心の大滝詠一』
【4月28日 記】 NHK BS から録画しておいた『わが心の大滝詠一』を観た。大瀧詠一ゆかりのミュージシャンをバックに、彼の作品を何人かの歌手が歌うのと短めのインタビューによる構成。ナレーターは爆笑問題の田中裕二。
インタビュー部分には松本隆や萩原健太による、やや長めの追憶や解説もある。
『さらばシベリア鉄道』の録音中に「この歌は女声のほうが向いている」ということになって太田裕美が起用されたとか、ロンバケの作詞を頼まれた松本隆が、実の妹が急死してとても歌詞が書ける状態ではなくなって、大瀧に断りを入れたら「書けるようになるまで待つよ」と言われたとか、すでに知っているエピソードもたくさんあった。
それにしても、鈴木茂も萩原健太もすっかりおじいさんになってしまったなあ、と少し驚いた。
トップとラストは大瀧詠一自身のボーカル・トラックに演奏をかぶせた。小泉今日子とは“デュエット”もやった。
同じように年をとっても、小泉今日子も薬師丸ひろ子も、僕は若い頃からのファンだし、今でも素敵だなと思う。
他に歌ったのは氷川きよし、BEGIN、小林旭、横山剣、TARAKO、鈴木雅之…、思い出した順番に書いているのだが、誰かを忘れているかもしれない。
スタジオの演奏は井上鑑が総監督兼編曲。本人が言っていたように元のアレンジを踏襲したアレンジ。
鈴木茂を筆頭に、浜口茂外也やら吉川忠英やら中西康晴やら、いろんな人がいる。しかし、それにしても、白井良明がストローク専門のアコースティック・ギターというのは、いくらなんでももったいない気はしたが。
こうやって改めて聴くと、作曲家大瀧詠一の巧さを象徴するのは2点かなと思う。
ひとつはアメリカンポップスを知り尽くした彼の多彩なコード進行。長調から短調に、そしてまた長調に“揺り戻す”ような感じが非常に巧い。
それからもうひとつは、彼が多用する二拍三連符。しょっちゅう出てくるので「いつも同じ」とも言えるのだが、この使い方も極めて効果的だ。
大勢が歌って、一番驚いたのは島津亜矢という人(やっぱり上では書き落としていた)。僕はこの人のことを全然知らないが、『風立ちぬ』を歌った彼女は驚くほど美しい声で、驚くほど正確な音程で、驚くほど表現力があった。
最後に『幸せな結末』を持ってきたのは、そのタイトルになぞらえたのだろうけれど、これはちょっと失敗かなと思った。そんな言葉遊びに興じることなく、もっと他に名曲と言って良い作品はたくさんあるのだから、そういうので締めるべきではなかったかな。
冒頭が『君は天然色』だっただけにちょっと見劣り、いや聴き劣りがした。
でも、いずれにしてもとても楽しい、良い歌番組だった。
なお NHK の HP では「我が心の」になっているが、番組内の肩テロップは「わが心の」、もっと正確に言うと「わ・が・心・の」だった。
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