映画『騙し絵の牙』補足
【3月29日 追記】 一昨日観た映画『騙し絵の牙』の補足。今回の記事は若干ネタバレありです。ご注意ください。
まず、この映画の宣伝方針は間違えているのではないかという気がしてならない。ポスターなどに書いてあるキャッチコピーは「騙し合いバトル、開幕!」、「ウソを見破り、ウラを暴け」──これは少し違うのではないか?
宣伝担当者はこの映画のコンゲーム的な面白さをアピールしたいのだろう。それはそれで的外れではないのだが、この映画の凄さは単なるコンゲーム的な面白さに留まらないところだと思う。そこをアピールせずにどうする?
そのほうが客が入るという計算なのか?
別のポスターでは上下段に出演俳優15人を並べて、真ん中に「全員ウソをついている!」って、これはひどくないか? もちろん何人かはなにがしかの嘘をついているが、嘘をつきまくっているのは大泉洋が演じる速水ぐらいのもので、中には全く嘘をついていない人まで含まれている。
ウソついてんのはお前のほうやろ! 宣伝担当者!
こういうポスターを観ると本当に悲しくなる。
さて、冒頭で貶したので、ここからは褒める。
一昨日の記事には書かなかったが、この映画を観て感心したのは、物語の中に出てくる雑誌の完成度。
伝統と権威だけで持っているような純文学誌「小説薫風」
売上が落ちてきたカルチャー誌「TRINITY」
速水編集長が来てテコ入れしたリニューアル後の「TRINITY」の表紙
モデルの咲(池田エライザ)が昔投稿していたガン・マニア向けの同人誌
大御所作家・二階堂(國村隼)の小説を漫画化した際のポスター
最後に恵(松岡茉優)が値打ちこいて売る厚ぼったい小説本。
──これらのデザインや装丁が、どれをとっても見事に「らしい」のだ! こういう小道具の技が映画を面白くしてくれた。
最後にもう一点。
速水が咲の撮影現場に忍び込んで本人に話しかけるシーンがあるが、咲が当代売れっ子のトップモデルであることを考えると、周囲のガードは相当固いはずで、あんなことが容易にできるはずがない。
また、小説『バイバイを言うとちょっと死ぬ』の著者の正体を一体どうやって見抜いたのかの説明が全くなくて、想像がつかない。恵がどうやって往年のベストセラー作家・神座の居場所をつきとめたかについては簡潔な描写があっただけに、ここの部分もちゃんと(「2回め読んで分かった」と言うだけでなく具体的に)説明すべきではないか。
──などなど、よくよく考えてみると、この映画には説明がうまくついていないところがいくつかある。
でも、そんなことに気づかせない、と言うか、気を逸らせないところが、一昨日も書いたこの映画のテンポのすごさだと思う。
本当によくできた映画だと思った。宣伝以外は(笑)
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