『筒美京平 SONG BOOK』
【3月26日 記】 あっちの CD評を書いてこっちの CD評を書かないわけには行かないので書く。宮本浩次の『ROMANCE』に次いで買ったのは『筒美京平 SONG BOOK』だ。
このブログにも何度も書いているように、僕は筒美京平の信奉者であり、筒美京平を愛してやまないファンである。
でも、このトリビュート版が武部聡志プロデュースでなかったら、そして、武部聡志と本間昭光がアレンジし、橋本愛が歌った『木綿のハンカチーフ』を試聴していなかったら、僕はこの CD を買っていなかったかもしれない。
この『木綿のハンカチーフ』はそれほど素晴らしい。原曲の非常に印象的なイントロを捨てて、ピアノだけの伴奏で橋本愛が歌い始める。彼女が歌うなんて知らなかったし、巧くもない。だけど、武部のピアノと橋本の声がきれいに溶け合って、じんわりと聴く者の心に染み込んでくる。
このアルバムも『ROMANCE』同様、選曲が素晴らしい。
作詞家も橋本淳と松本隆ばかりにならないように、阿久悠がいて、林春生がいて、阿木耀子がいて、北山修がいて、秋元康がいて、康珍化がいる。──なんという豪華なラインナップだ。そして、編曲家陣も武部、本間の他に亀田誠治や小西康陽が参加するなど、ものすごくそそられる。
以下にラインナップを上げておく。括弧内に原曲の歌手名を入れ、全て筒美京平作曲に決まっているので、それに続けて作詞、編曲、歌唱の順に名前を記しておく。
- 『人魚』(NOKKO)NOKKO、武部聡志、LiSA
- 『東京ららばい』(中原理恵)松本隆、亀田誠治、片岡健太(sumika)
- 『木綿のハンカチーフ』(太田裕美)松本隆、武部聡志/本間昭光、橋本愛
- 『ブルーライト・ヨコハマ』(いしだあゆみ)橋本淳、西寺郷太、アイナ・ジ・エンド(BiSH)
- 『卒業』(斉藤由貴)松本隆、武部聡志/亀田誠治、生田絵梨花(乃木坂46)
- 『また逢う日まで』(尾崎紀世彦)阿久悠、武部聡志、北村匠海(DISH//)
- 『サザエさん』(宇野ゆう子)林春生、本間昭光、miwa
- 『魅せられて』(ジュディ・オング)阿木耀子、MANABOON、芹奈&カレン(Little Glee Monster)
- 『シンデレラ・ハネムーン』(岩崎宏美)阿久悠、小西康陽、一青窈
- 『さらば恋人』(堺正章)北山修、武部聡志、前田亘輝(TUBE)
- 『ドラマティック・レイン』(稲垣潤一)秋元康、武部聡志、JUJU
- 『君だけに』(少年隊)康珍化、武部聡志、西川貴教
全般的にあまり原曲のアレンジを壊してはいない。でも、さすがに全く違うメロディにはできなかった『魅せられて』のイントロの、工夫があってなんと味わい深いことか。
小西康陽の少しジャジーな『シンデレラ・ハネムーン』。そして本間昭光のなんとポップな『サザエさん』。まともに歌を聴いたことがなかった北村匠海の伸びのある良い声。アイナ・ジ・エンドがこれほど歌謡曲にマッチするとはと驚いた『ブルーライト・ヨコハマ』…。
実は 4/17・18 に東京国際フォーラムで開催される「筒美京平 オフィシャル・トリビュート・プロジェクト ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート」のチケットを取ろうかと思ったのだが、なんとなくもうピークをすぎた歌い手たちの歌を聴くのがしんどい気がしてやめてしまった。
やっぱり、こういう新進気鋭の歌手たち(女優もひとりいるけど)の、斬新な取り組みを聴くほうが、それこそ筒美京平の再発見になるような気がする。
思った通り、これはファンとしては必須のコレクションであった。コーラス・ワークをあしらった曲が2つ3つあればもっと素晴らしかったのだけれど。
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