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Friday, February 19, 2021

映画『あの頃。』

【2月19日 記】 映画『あの頃。』を観てきた。今泉力哉監督+冨永昌敬脚本という、ものすごい組合せ!

原作があったとはいえ、よくもまあこんなとりとめもない話を映画にしようと思ったな、というのが観ている途中からの感想。

アマチュア・バンドでベースを弾き、音楽の道で食って行けたらと考えていた劔樹人(=原作の漫画家本人、松坂桃李)がひょんなことから松浦亜弥のとりこになり、そこからまたひょんなことからハロプロ・オタクのグループの一員となり、ハロプロに狂いまくる青春時代の話。

この仲間たちを演じているのが仲野太賀、山中崇、芹澤興人、若葉竜也、コカドケンタロウというなんとも言えない曲者揃い。いい歳した社会人がバカばっかりやってる様がおかしい。

いつもの今泉脚本とはリズムも濃淡も異なるが、冨永昌敬は今泉力哉が尊敬する監督というだけあって、相性は最高、鉄壁の組合せである。

結構ろくでもない奴が揃っている中で、とりわけコズミン(仲野太賀)がひどい。そして、おかしい。フーゾク狂いで、ケチで、ネット弁慶で、身勝手でいきあたりばったりで、仲間たちからも「嫌な奴だ」と陰口を叩かれながら、でも、みんなから思いっきり愛されている。

『すばらしき世界』に続いて(と言うか、撮影した順番は逆だけれど)本当に見事な演技だった。もうお父さんは抜き去ったね(笑)

ところが終盤このコズミンが病魔に襲われる。でも、そんな中でも本人も、仲間たちも、やっぱりバカなことをやっている。映画の中の台詞にもあるように、それが本当に楽しいのだ。中学10年生なのだ。今が一番楽しいのだ。

──そういう感じって、この監督、この脚本だからこそ、ここまでいきいきと描けたのだと思う。何箇所かあった銭湯のシーンなんか最高だった。

で、そういう話だから、コズミンの病気以外にはほとんど何も起こらない。にもかかわらず、このじんわりと熱い感じは何なのだ?

多分 1950年代だったり 80年代だったり、あるいは 2010年代だったり、人によって時期はそれぞれなのだろうけれど、我々ひとりずつに「あの頃」があったんだと思う。

こういうのを見て俄に甦るのは、アホみたいなことばっかりやってる仲間内での、当時の自分の立ち位置であったり役割であったりする。

ああ、こんな奴おったなあ。で、そういう時に必ずこういうこと言う奴もおった。そうすると大抵こんなひどいことになる。みんな泣きながら笑ってた。そんな仲間たちの中で、自分はこの辺で、こんな感じやったなあ…などと。

言っておくが、この映画を観ても得することなんか何もない。だからこそ泣けてくるのだけれど。

絶品の青春映画だった。次は逆に今泉脚本・冨永監督でもう1本というのはどうだろうか。

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