「キネマ旬報」2月下旬号(2)
【2月7日 記】 今年もキネマ旬報2月下旬号で発表された2020年邦画ベストテンのデータを少し分析してみます。
統計学的には必ずしも正しいやり方ではないのでしょうが、僕が毎年やっているように上位10作品ぐらいに限定してやるのであれば、それなりに傾向は見えると思っています。
キネマ旬報ベストテンは、2020年の邦画部門の投票で言うと「キネ旬編集部」を含む 60人の審査員がそれぞれ合計55点を持って、1位には 10点、2位には 9点、…、10位には1点と入れて行き、その合計得点で順位が決められるわけです。
で、僕は集計表を見ながら毎年それを“分解”して遊んでいます。
作品の合計得点を、投票した審査員の数で割るのです。そうすると、その作品に票を投じた審査員1人当たりの平均得点が出ます。その平均得点と投票人数を見比べて、映画がどんな形で受けたのかを考えるのです。
つまり、投票した審査員の数は多いけれど平均得点は低い場合は広く浅く受けた映画、投票した審査員は少ないけれど平均点が高い場合は一部の観客に熱狂的に受けた映画ということになります。
さて、2020年の結果は:
- スパイの妻(劇場版)
204点=31人×6.58点 - 海辺の映画館──キネマの玉手箱
188点=25人×7.52点 - 朝が来る
139点=20人×6.95点 - アンダードッグ
136点=23人×5.91点 - 本気のしるし 劇場版
127点=21人×6.05点 - 37セカンズ
118点=23人×5.13点 - 罪の声
117点=20人×5.85点 - 喜劇 愛妻物語
114点=17人×6.71点 - 空に住む
97点=15人×6.47点 - アルプススタンドのはしの方
86点=15人×5.73点
まず目につくのが『海辺の映画館』の平均点の高さ。毎年 7.5 を超えるのはあっても 1本(ない年もある)なので、大林監督の遺作が如何に深い思い入れをもって評価されたかがよく分かります。
そして、この作品が 2位であるところがポイントで、それを合計得点で上回って1位に輝いた『スパイの妻』が、如何に多くの人たちに受け入れられたかが如実に分かります。
過半数の審査員が得点を入れた映画はこれだけでした。今回は公開本数が減った割には、全体に票が割れた感じもあります。プロの映画評論家と言えども、やっぱりコロナの影響で鑑賞本数は減ったのでしょうか(その辺は定かではありません)。
しかし、それにしてもこの映画、僕の周りではあまり褒めない人が多かっただけに、今回の結果は面白いです。
第3位の『朝が来る』も傾向としては『海辺の映画館』と同様だと言えるでしょう。
あとはそれなりに順位なりの数字が並んでいるのですが、そんな中で特徴的なものを抜き出すと、『37セカンズ』の平均点の低さ(=投票した人数の多さ)と『喜劇 愛妻物語』の平均点の高さ。
前者は広く浅く評価され、後者は狭く深く評価されたということだと思います。
しかし、毎年同じ分析をしているのですが、今年は僕としてはあまり面白くありません。それは何故かと言うと、観ていない映画、観ようとさえ思わなかった映画があまりに多かったから、あまり実感が持てないんですよね。
今年は早くコロナの悪霊が退散して、たくさん映画を観られますように。
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