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Saturday, January 09, 2021

映画『ジョゼと虎と魚たち』

【1月9日 記】 映画『ジョゼと虎と魚たち』を観てきた。複数の知人が褒めているのを読んだから。

『ジョゼ』と言えば僕にとってはまず犬童一心監督であり、池脇千鶴である。2003年キネマ旬報ベストテン日本映画部門第3位に輝いた実写映画だ。

僕は WOWOW でこの映画を観て池脇千鶴がタダモノではない女優であることを思い知らされ、いっぺんにファンになった。

だが、これの原作が田辺聖子であるとは知らなかった。田辺聖子と言うからもっと古い作品かと思ったが、1984年に発表された小説だそうな。今回のアニメ版では、携帯電話のある現代に設定が置き換わっていたが。

で、それほど感銘を受けた実写版だったのだが、例によってほとんど何も憶えていない。今回のアニメ版を観ながら、「あれ? こんな話だっけ?」を首を傾げた。調べてみたら、原作とも実写版とも変えているところが結構あるようだ。

ま、そんなことはどうでも良い。僕が映画を観るときに評価のポイントにしているのは、それが映像でしか表現できない作品になっているか、それがアニメであるならアニメであるからこその表現になっているかどうかということだ。

そういう意味ではアニメ的に優れた作品だった。制作はボンズである。

冒頭の恒夫のダイビングの場面から、もう少し後のジョゼが“空を泳ぐ”シーンに繋げる辺りは却々巧いなと思った。

もちろん 3DCG は背景など随所に使われているのだが、基本は 2次元テースト、平面アニメらしい線画のタッチで、最近多く目にする「これは写真をそのまま使っているのではないか?」と思うような絵柄ではない。これはこれで好感が持てる。

とは言え、カメラ的な視点は導入されていて、人物の奥や手前の、焦点が当たっていない部分は少しぼかしてあったりするのは、やっぱり現代のアニメ制作である。

ただ、予算の問題もあったのかもしれないが、特定の場面を除いて髪の毛がほとんど風になびいたり動きに揺れたりしないのは、ジョゼがカールのかかった複雑な髪型ゆえに如何にも手抜きな感じに見えて(あれではまるでクレヨンしんちゃんのお母さんではないか)少々残念であった。

あともうひとつは、ジョゼの声を担当した清原果耶は、大阪出身らしいのだが、あの「海」のアクセントは何なんだろう? 関西人が聞くとあれは「海に行きたい」ではなく「膿に行きたい」としか思えなくて、めちゃくちゃ気になった。

ま、気になったのはそんなぐらいで、桑村さや香の脚本もよく書けていて、風情のある良いアニメだった。やっぱり原作小説が人間という複雑な存在を的確に捉えているからなんだろう。もう一回池脇千鶴の実写版を観たくなった。

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