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Saturday, January 30, 2021

映画『おもいで写眞』

【1月30日 記】 映画『おもいで写眞』を観てきた。なんで「眞」だけが旧字体で「写」は「寫」にしなかったんだろう?

テンカラットが開設25周年記念映画として青春恋愛映画の名手・熊澤尚人監督を迎えて製作した作品。

だが、なんで深川麻衣主演なのか? 主演すること自体はおかしくはないが、25周年の看板を背負うには年齢的にもキャリア的にもやや中途半端で、イメージとしてもやや地味ではないか?(前作『パンバス』は良かったけど)

テンカラットと言えば、この映画にも出ているが、高良健吾や井浦新、香里奈、そして他にも田中麗奈や石田ひかり、中条あやみをはじめ、錚々たる俳優を抱えている。それとも、事務所的にはちょうど深川麻衣あたりが強化ポイントだったんだろうか?

などといろいろ思ったのだが、これは熊澤監督の指名だった。

上映前の舞台挨拶ライブ・ビューイングで聞いた話では、この企画は熊澤監督が9年前に書いて映画化しようとしたのだが却々実現せず、そんな中で監督がテンカラットで演技レッスンを受け持ったときに、「深川麻衣主演で撮ると面白いのではないか」と閃いて脚本を書き直し、テンカラットに持ち込んだとのこと。

テンカラットからはその場で OK が出たしたらしいのだが、その際に監督がすかさず「では、相手役は高良健吾さんでお願いします」と、これまた名指ししたのだそうである。

東京でメイクアップアーティストとして成功する夢に破れた結子(深川麻衣)が、祖母の死をきっかけに生まれ故郷の富山に帰るところから映画は始まる。車窓から見える景色がいきなり嵌め込み合成だったのはちょっと興醒めしたが、ま、大したことではない。

祖母の遺影は、適当なものがなく集合写真をトリミングして引き伸ばしたためにちょっとピンぼけになっていた。そのことに心を痛めていた結子の幼馴染の一郎(高良健吾)は自分の職場である役場に企画書を出して、一人住まいのお年寄りの遺影を無料で撮影してあげるサービスを始める。

そこで目をつけたのが、実家が元々は写真館で、高校時代は写真部だった結子だ。一郎に説得されて、一郎が担当する地域の老人ばかりが暮らしている古い大団地に結子は行くのだが、いきなりピンポンして「遺影写真を撮りませんか」と言っても相手にしてもらえるはずがない。

それを聞いて一郎が呼んできたのがソーシャル・ワーカーの美咲(香里奈)だ。彼女の伝手で紹介してもらった和子(吉行和子)が「行きたいところがある。そこで撮ってくれるならやっても良い」と言い、結子の顧客第1号となる。

そして、和子が「これは遺影写真じゃないわね。おもいで写真ね」と言ったことから、結子の仕事は遺影撮影から老人たちの思い出の採掘と再現へと変容して行く。

深川麻衣は監督から微笑み禁止令を申し渡されて、前半は全く笑わない。ふてくされて不満が一杯で表情も暗い。

それがこの仕事を通じて、少しずつ変わって行く。居酒屋(料亭?)のトイレから出てきた一郎と足の踏み合いをするシーンで結子は初めて笑い、初めて富山弁が戻ってくる。とても微笑ましい、良いシーンだ。

性格のキツイ人物を演じることも少なくない高良健吾だが、ここでは如何にも人の良い田舎の役場の兄ちゃんで、とても感じが良い。時々は幼馴染の気安さもあって、結子にビシッときついことも言う。

ただ、「何事も白黒をはっきりしないではおられない頑なな結子が、一郎や老人たちとの交わりの中で、世の中はそんなにきれいには割り切れないのだということを学んで行く」という設定があまりにもストレートで、その筋が一本くっきりと通り過ぎているために、やや描写が薄っぺらくなった面はある。

脚本もいろんな伏線を見事に回収しているのだが、少し盛り込みすぎたかな、どれかのエピソードをもっと強調しても良かったかも、と思った。

でも、後味の良い、良い映画だったのは確か。結子が撮ったという想定の写真は、全てこの映画のスチルを担当した千葉高広が撮影したものだ。これらの写真に写っている人々が本当に良い表情をしているのだ。だから、説得力がある。

月永雄太のカメラもとてもきれいで、田舎道、団地、魚河岸、町を見下ろせる丘など変化に富み、写真展のやや俯瞰の構図なども非常に良かった。

最後の一郎の「おいおい、そんな言い方で、結子に何が言いたいか伝わるのかよ」と言いたくなるような端切れの悪い台詞もリアルで、却々良い終わり方ではなかっただろうか。

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