これ、高かった
【1月31日 記】 「なんでぇな、これ高かったんやで。上等やで。純毛やで」
昔、母や伯母に「その服はもう古いから棄てたら?」みたいなことを言うと、よくこんな風に言っていた。純毛って分かるかな?──ウール100%のこと。
思えば母の世代の人たちにとって、高かったということは買い換えないことの正当な理由だった。「まだ着られる」ことが着続けるモチベーションになった。
だが、上等舶来の純毛よりもユニクロの 1990円のフリースのほうが、哀しいかな、遥かに暖かかったりするのだ。技術の進歩はそういう事態をあちこちで呼び起こしてしまう。
資源を無駄にしないというのはあっぱれな心がけである。しかし、もしもユニクロに買い替えていたら風邪をこじらせずに済んだのかもしれない。暖房費が安く上がったのかもしれない。寒空でも出かける気になって、何かステキなことに遭遇したのかもしれない。
物事を広く考えると、一つの立派な価値観が損失を生むこともあるのだ。
僕は技術の進歩を実感できる時代に生まれ育ち、技術の進歩を体感できていることを嬉しく思う。そして、今後もこの流れに乗って生きて行くのだと思う。
フリースは安くて暖かい。
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