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Sunday, December 27, 2020

回顧:2020年鑑賞邦画

【12月27日 記】 今年も「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」を選んでみた。2006年から毎年やってきて、今回が記念すべき 15回目になる。

毎年毎年同じことを書いているが、これは僕が選んだ今年の第1位から第10位ではない。また、決して「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入るであろう邦画10本」ではなく、あくまで「入ってほしい10本」、つまり、言わば僕の応援メッセージである。

そして、入ってほしい対象としているのは『キネマ旬報ベストテン』ではなく(それだとあまりに狭き門だから)、「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内」である。

今年観た邦画は『劇場』を含めて 41本。コロナ禍のせいで例年よりは少ない。この 15年では最低の本数である。

『劇場』は映画館もしくは試写会で観たのではないので、例年のルールからすると外すべきなのだが、劇場公開と Amazon Prime での配信開始が同時だったこともあり、たまたま Amazon で観ただけという位置づけにして、対象に含めることにした。

また、今年は来年公開予定のものを試写会で先に観てしまったという作品はない。逆に『もののけ姫』は(僕は初見だが)再映なので除外して、合計 40本から選ぶことにしたのだが、そこではたと気がついた。

ご存知の通りキネ旬ではドキュメンタリ映画は別部門である。結局今年観たドキュメンタリ映画『さよならテレビ』、『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』、『なぜ君は総理大臣になれないのか』を除外することになった。どれも良い出来だったので残念ではある。

それで、最終的には3本減って、37本から 10本を選ぶという広き門になった。ところが最初に何も考えずにリストアップしたら、なんと 17本もあるではないか! そこから 7本削るのは難しかったが、まず落とした 7本を先に書くと、

基準は必ずしも映画の良し悪しではない。僕が思い入れを持って応援したいかどうかの問題だ。

だから、必然的に前から贔屓の監督に肩入れしたくなる一方で、毎年そうなのだが、「この映画は放っておいても賞に選ばれる」と思う作品は除外する傾向にあるのも確かである。今年で言えば『糸』と『罪の声』がそうだ(キネ旬でも選ばれるだろうとは言い切れないが)。

で、残ったのが下記 10本。いつものように、僕の評価が高い順ではなく、単純に観た順番である。

  1. ロマンスドール
  2. mellow
  3. ステップ
  4. 劇場
  5. アルプススタンドのはしの方
  6. ミッドナイトスワン
  7. 空に住む
  8. おらおらでひとりいぐも
  9. さくら
  10. 私をくいとめて

1)は少し毒気が薄れた感じのタナダユキ監督だが、ともすれば「ヘンタイ」と片付けられそうな性の問題を捉えて、しかも限りなく美しい映像であったところに強烈に惹かれた。高橋一生と蒼井優という組合せも最高。

2)はまさに「今泉力哉監督恐るべし!」と言うべき作品。長回しなど演出面での技巧もあるが、なによりも脚本が巧く、設定が見事で、後口が良かった。田中圭という役者の特性を巧く引き出し、活かしたと思う。

3)は飯塚健監督の最高傑作だろう。人間がほんとうに人間らしい肉付けに支えられて描かれている。山田孝之を筆頭に、役者も皆すばらしく、とんでもない名作になったと思う。

4)は行定勲監督の真骨頂。原作は読んでいないが、恐らく他の監督が撮ったらこんなに素晴らしい映画にはなっていないと思う。蓬莱竜太の脚本がめちゃくちゃリアルで、松岡茉優がもうべらぼうに巧い。

5)初見の監督作品も1本ぐらいは選んでおかないとね(笑) 全国高等学校演劇大会で最優秀賞を獲ったという脚本が初々しい。その初々しい素材を手練の城定秀夫監督が上手に捌いた感じ。知らない役者ばっかりだったが、良かった。

6)はもう草彅剛の独壇場。これはひょっとしたら僕が推さなくても何か賞を獲る映画なのかもしれないが。監督は内田英治。この人も今まで僕があまり知らなかった人だ。構図が良いよね。

7)は久しぶりの青山真治監督。こんな映画はこの人でないと撮れない。池田千春の脚本も絶品。よくこんな筋で映画を作ろうと思ったものだ。画作りが半端じゃない。静かだけれど、しっかりと重みのある、愛おしい愛おしい映画になった。

8)は沖田修一監督による芥川賞受賞作品の映画化。田中裕子の存在感が圧倒的なのだが、彼女の分身として3人の男優(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)を配したアイデアが絶妙だった。

9)は西加奈子原作、矢崎仁司監督。これまた飛びっきり切なくて愛おしい映画。思うに僕はマイノリティに焦点の当たった作品が好きだ。小松菜奈に主演女優賞を獲らせてやりたいと心から思わせてくれる、入魂の演技だった。

10)は見終わった途端に「大九明子監督、やったね!」と叫びたくなった。綿矢りさとの2度めのタッグも見事に息が合って、まさに大九明子ワールド! のんが素晴らしい。橋本愛も良い。監督や演者の思いがビシビシ伝わってきた気がした。

今回はこんなとこかな。ま、僕が選んだものは却々選ばれてくれないのだが、10本のうち半分ぐらいは 20位以内に入ってほしいものだ。

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