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Sunday, November 08, 2020

鬼滅の刃に思う──漢文事始

【11月8日 記】 これだけ話題になっても私が映画『鬼滅の刃』を見ないのは、何も『鬼滅の刃』に反感を抱いているからではありません。

ただ単に他に見たい映画が山ほどあって追いつかないということ(これはコロナの影響でいろんな作品の公開スケジュールが変わってしまい、その結果10月、11月に集中してしまった結果です)。

それと、どうせ見るのであればコミックスの第1巻かTVアニメの第1話から見たいという、言わばある種の贅沢心が邪魔をしているだけです。

だから、『鬼滅の刃』を貶すことなんて何もありません。そもそも見てもいない映画を貶すようなことは今までもやっていませんし。

ただ、ひとつだけ、どうも気に入らない、と言うか、引っかかっていることがあるにはあります。

それは、「鬼を滅ぼす刃」なのだから、『鬼滅の刃』ではなく『滅鬼の刃』ではないのかな、ということ。同じように、作中に出てくる「鬼殺隊」も「殺鬼隊」であるべきではないのかな、ということです。

聞くところによると、この作品の舞台は大正時代であり、鬼殺隊はさらにその数百年前から存在する組織なのだそうです。それくらいの時代の人であれば、現代の我々と違って、漢文の素養はかなりあったはずです。

「鬼ヲ滅ボス」は漢文では「滅鬼」に、「鬼ヲ殺ス」は「殺鬼」なるはず。「惡鬼滅殺」を縮めたものだという反論もあるのかもしれませんが、それを言うならそれも本来は「滅殺惡鬼」のはずです。

「悪霊退散」と同じ語順だと言う反論もあるのかもしれませんが、一方は「悪霊ハ退散ス」(あるいは「退散セヨ」)という主語+述語の関係であるのに対して、他方は「悪鬼ヲ滅殺ス」という動詞+目的語の関係です。だから、やっぱり「滅殺惡鬼」であり「殺鬼」のはずなんですよね。

その辺のことが、学生時代からすこぶる漢文が好きだった私には、なんか引っかかって仕方がないのです。

でも、あんまり言うと熱狂的なファンから百叩きの刑に処せられそうですし、それに、そんなことでこの作品がダメだなんて言う気はないんだし…。

いずれにしても「殺鬼隊」ではまるで「五月隊」みたいだし、『滅鬼の刃』ではまるで鋳物にメッキを施した安物の刀みたいで、とても鬼を斬れそうもありませんからね。

失礼しました。

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