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Wednesday, September 23, 2020

ホタル族の絶滅

【9月23日 記】 僕が住んでいるマンションの掲示板に、最近誰かがバルコニーで煙草を吸っていたようだが、規約違反なのでやめるように、との通告が貼り紙になっていた。

僕自身はもう10年以上前に煙草をやめているし、一方で他人の煙草がそれほど気になるタチでもないのでそんなに神経を尖らせてはいないのだが、やはり気になる人は気になるのだろう。換気口や窓から臭いが入ってきて耐えられないと言う。

思えばホタル族という言葉があった。調べてみると30年ぐらい前に流行した言葉だ。

それは、室内での喫煙を疎まれた(主に)男たちが、仕方なくバルコニーに出て喫煙するようになり、夜間にそれを遠く外から眺めていると、あちらのバルコニーにもちらり、こちらのバルコニーにもちらりと火が灯り、それが夏の蛍のようであったことからついた名前だ。

つまり、30年前にはバルコニーは喫煙禁止地帯ではなかったのだ。

家族の意向を尊重するため、家族の健康を守るため、(主に)男たちは自らバルコニーに出て紫煙をくゆらせていたのだ。

それが今では、バルコニーに出ることによって同居家族は守られたとしても、それは即、近隣の部屋への迷惑行為となって糾弾されるハメになる。しかし、糾弾されても仕方がない。入居の際にそういうルールになっていることはちゃんと聞いているのだから。

しかし、ならば、家族に嫌がられ、家族の健康を害することになろうとも、あくまで室内で吸えということか、と思うとなんだか複雑な思いがする。昔は自分の家族だけを守っていれば良かったのだが、今はそれ以前に近隣住民を気にしないと生きては行けないのだ。

つまり、何と言うか、どうしてもやめられない意志の弱い人は、近隣の住民ではなく家族の健康を損ないなさいと言われているような気がしてならない。進退窮まるとはこのことではないだろうか。

ま、どっちにしろ吸うことによって自分の健康も近くにいる人の健康も間違いなく害しているわけだ。煙草さえやめればそんなことは気にしなくても済むようにはなる。

苦もなくやめて10年以上経つ僕だから言えるのかもしれないが、さあ、そろそろやめるタイミングなんじゃないだろうか。でないと、こんな哀しい思いに耐えられない気がする。

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