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Saturday, September 19, 2020

映画『メイキング・オブ・モータウン』

【9月19日 記】 映画『メイキング・オブ・モータウン』を観てきた。モータウン・レーベルのドキュメンタリである。監督はイギリスのテレビ界でプロデューサー、ドキュメンタリスト、編集者などとして活躍しているベンジャミンとゲイブのターナー兄弟。

僕がモータウン・サウンドの熱狂的なファンだったのかと言うとそれほどではない。ただ、好きは好きで、好きな割にはあまり知らなくて、知らないからもっと知りたくて観に行ったという感じかな。年寄りばかりかと思いきや、さすがに中高生はいなかったものの、老若男女幅広い客層だった。

で、これが面白いのなんの!

映画はモータウンの創設者であり去年まで社長だったベリー・ゴーディJr とスモーキー・ロビンソンへのインタビュー(と言うか、インタビュアーは口を挟まず、ベリーとスモーキーが勝手に話しているところでカメラを回したという感じ)を中心に構成されている。

モータウンの歴史は米国本土ではいろんなところで紹介されているらしいが、僕はこのベリー・ゴーディという人の存在を知らなかった。スモーキー・ロビンソンはもちろん知っていたが、彼がレーベル創設以来のベリーの親友であり、レーベル最初の大ヒットを出した歌手であり、一時は副社長も務めていたとは知らなかった。

そういう関係だから、まず、この2人のやりとりが楽しいのだ。本人たちも何度も笑い転げているし。

何を措いても、ベリー・ゴーディの経歴と発想と人となりに驚き、魅せられてしまう。冒頭の、兄と2人で白人街に黒人の新聞を売りに行ったエピソードが秀逸だし、レコード店を経営していたときブルースのレコードを置いていなかったため売上が上がらず倒産したという話も面白い。

黒人の彼が「ブルースなんてどれも12小節で同じだ」と語るところが傑作だ。なるほど、これがモータウンの源流なのか、と膝を打った。

自ら作曲家であり、スモーキーら他の作曲家陣にライバル心を燃やす無邪気なベリー。そして、フォードの自動車工場の工員をしていた時にその生産ラインからレコード産業の経営の仕方を思いついたという類まれなる発想。

何より情熱的で、素直で、細かい心配りができて、そして、フェアな態度が従業員とミュージシャンたちをしっかりとまとめて行ったのだろうなと思う。彼は相当魅力的な男だ。さらに、そこに集まってきているスタッフやタレントの凄さ。こういうのをまさに梁山泊と言うのだと思う。

彼は黒人で固めた会社で黒人に黒人の音楽を売ろうとしたのではない。社員にはイタリア系の白人やユダヤ人もいた。そして、女性を重用したのも当時としては珍しいことだ。ニール・ヤングまで一時期モータウンと契約していたとは知らなかった。

そして、この映画のもう1つすごいところは、これでもかこれでもかと出てくるお宝フッテージ映像(&音源)の数々。よくこんなものを撮っていたな、よくこんなものが残っていたな、と感心するしかない。

デビュー前後のスティービー・ワンダーやマイケル・ジャクソンのステージ(つまり、その頃は2人ともまだ小学生だ!)は圧巻である。

それ以外にも枚挙に暇がない。テンプテーションズ、ミラクルズ、マーヴィン・ゲイ、マーヴェレッツ、スプリームス、マーサ&ザ・ヴァンデラス、グラディス・ナイト&ザ・ピップス…。映画の中では50曲以上の楽曲が流れている。

めちゃくちゃ面白かった。できればもう一回観たい。そして、ディスクが発売されたら買いたい。

ところで、Motown が自動車の街デトロイトの Motor Town から来ていることを、この映画で初めて知った。

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