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Saturday, August 01, 2020

映画『君が世界のはじまり』

【8月1日 記】 映画『君が世界のはじまり』を観てきた。

最初に気になったことを書いておくと、カット変わりがちょっと遅い感じがした。人が映っていないドアや手すりや机などの画、あるいは台詞を言っていない(言う前、あるいは言った後の)俳優のクロースアップなどのカットが、もう1秒ぐらい早く切り上げて次のカットに移っても良いんじゃないかなと。

演技(演出?)がまったりしてるから間が長くなるのか、あるいはその逆なのか。序盤はそんなことが結構気になった(役者が下手という意味ではないので念のため)。

ふくだももこという人については僕は全く知らなかったのだが、注目されたのは映画制作のほうが先で、その後すばる文学賞を獲ったらしい。で、この映画は自作の小説2編を合体して映画化したもの。監督はふくだももこ本人である。

これは正調大阪版エモい青春ムービーだと思う。

このテイスト(特に女の子の柄の悪い感じ)が果たして全国的に受け入れられるのかどうか分からないが、青春期のなんとも言えないモヤッとした感じを、弾けているようで弾けきれていない感じを、極めて巧みに、嫌味なく描けた映画だと思う。

台詞がいちいち巧くて、すごいなあと思って観ていたら、脚本を手掛けたのは向井康介だった。原作者も想像がつかなかったという2作の小説の縫い合わせもさることながら、個別の台詞のリアルさとキレ、そして、それらを編み上げて立体的な構成に仕立てた腕はやっぱりすごい。

縁(ゆかり、松本穂香)は大阪の高校2年生。成績は学年トップだが、劣等生の親友・琴子(中田青渚)とつるんで、廃墟になっている旧講堂で煙草を吸ったりしている。

琴子は気性が激しく、直情径行。惚れっぽく飽きっぽく、好きになったら自分からアタックするが結局長続きしない。縁のことを“ゆかり”ではなく“えん”と呼んでいる。

ある日、旧講堂の地下で涙を流しているサッカー部の業平(小室ペイ)を見てしまい、琴子は業平に一目惚れする。その琴子に思いを寄せているのが同じくサッカー部の岡田(甲斐翔真)。岡田は面倒見が良く、また女子にも結構持てる存在だが、本人は琴子一筋である。

一方、同じ高校に通う純(片山友希)は、母親が家を出ていったのは父親(古舘寛治)のせいだと思っており、父親を憎み、父親が一生懸命ご飯を作ったりしても口も聞かない。

その純が、東京からの転校生・伊尾(金子大地)が車の中で年上の女性と激しくキスしているのを見てしまい、こちらも伊尾に強く惹かれたのと、自分の孤独を紛らわせるために、伊尾に迫りすぐに肉体の関係を結んでしまう。

原作のうちの片方のタイトルが『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』で(もう一つは『えん』)、この映画も『人にやさしく』などのブルーハーツの楽曲がモチーフになっている。

ブルーハーツをモチーフにした映画は多い。例えば山下敦弘の『リンダ リンダ リンダ』(2005年)がそうだが、言うまでもなくこの映画の脚本を書いたのも、山下監督の大阪芸大時代からの親友であり、映画作りの盟友でもあった向井康介である。

あるいは、2017年には『ブルーハーツが聴こえる』というオムニバス映画も撮られており、これも良い作品だった。

年齢を考えるとふくだももこがどうやってブルーハーツと巡り合ったのか想像できない(彼女が4歳の時に解散している)が、それにしてもどうして映画界にはこんなにブルーハーツのファンが多いんだろう?

ただ、いずれにしても、どの映画も見事にブルーハーツの世界を体現している。台詞にもなっていたが、「君が世界のはじまり」というタイトルも素晴らしい。

この映画はちょっと相米慎二監督の『台風クラブ』を思い出させるようなところもあり、言葉で論理的に説明できない(それこそエモい)部分を、台詞と映像で見事に描いていると思った。

3人の女子高生役がそれぞれ大阪、兵庫、京都の出身で、関西弁のぶっちゃけた、ある時は乱暴な、そして本音っぽくて、オチ狙いの関西人らしい台詞がとても自然で、ちょっとお好み焼き食い過ぎの感はあるが、関西人には嬉しい映画だった。

あと、ちょっと尻が長かったかな。もうちょっと早めにぶった切っても良かったかも。

この映画でも新型コロナウィルス対応のリモート舞台挨拶があった。ピンぼけだが一応写真を上げておく。Photo_20200801171901

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