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Tuesday, August 04, 2020

映画『アルプススタンドのはしの方』

【8月4日 記】 映画『アルプススタンドのはしの方』を観てきた。全国高等学校演劇大会で最優秀賞を獲った戯曲が原作で、後に浅草九劇で上演もされたらしい。

如何にも舞台らしい仕立てである。これ、原作はひょっとしたら一場ものだったのかもしれない。

舞台は高校野球が行われている甲子園球場。だが、グラウンドや選手たちは一切映されず、物語が展開するのはタイトル通りほとんどアルプススタンドのはしの方である。アルプススタンドは野球通が観る席だとも言われるが、高校野球のファンならご存知の通り、そこには応援団が陣取っている。

しかし、この芝居の舞台はアルプススタンドではなく、そのはしの方なのである(笑) 目の付け所としては秀逸である。

映画は野球のシーンは一切見せずに、しかし、打球音や歓声などの音響効果と、アルプススタンドの観客たちの目の動きと台詞で試合展開を伝えて行く。これも面白い進め方だ。

たまたまそのはしの方にいたのは、強制的に野球部の応援に駆り出された県立東入間高校の全生徒の中でも、とりわけ応援に力の入らない4人である。

──元野球部の控え投手で、エースとの力の差に絶望して退部してしまった藤野(平井亜門)。演劇部で、ルールも全然解っておらず興味も全く湧かないあすは(小野莉奈)とひかる(西本まりん)。そして、ガリ勉の優等生で、友だちもいない帰宅部の宮下(中村守里)。

今日の一回戦は、プロのスカウトも目をつける屈指の名投手を擁する甲子園常連の強豪校が相手で、勝てる気がしない。それだけに応援にも熱がこもらない。

この熱がこもらない4人のところに、エネルギー空回り気味の熱血教師・厚木(目次立樹)がしょっちゅうカツを入れに来る。ここは笑うとこであるが、芝居が大げさすぎてあまり笑えないw だが、それを茶化す女子生徒の台詞に笑えたりする。

そして、打って変わってアルプススタンドの真ん中辺には、力のこもった応援を続けるブラスバンドがおり、そのリーダーを務めているのが部活と勉強と恋の3つをしっかりこなしている久住智香(黒木ひかり)である。

舞台が限られるので、映像的にはあまりおもしろくない。確かにカメラアングルを変えていろんなところから撮り、たまには客席から出て外の回廊部分で芝居を進めたりもしているし、前半は辛抱して引き気味の構図で押え、終盤にクロースアップを多用するなど工夫はしている。

まあ、でも、その程度のものだ。

だが、台詞が見事に活きている。高校生が書いた話だけに、高校生の会話としてリアルだし、展開も巧い。なんでもないような会話の中にストーリーを巧く編み込んで、筋を運んでいる。

その台詞と筋運びにあまりにも無駄がないので、観ていて「なにそれ」と小ネタ的な話に笑いながらも、「いや、待て、これは何かの伏線だ」「ああ、それはきっとこの子のことなんだろう」「後で多分それがこうなるんだろう」と何箇所か読めてしまったのも確かだが、でも、よく考えて練り込んだ台本だ。

宮下恵が久住智香に向かって叫ぶ突然の展開には、不覚にも泣きそうになってしまった。

で、試合終了とともに一旦話は終わるとして、その後をどう締めるかだなあと思って観ていたら、さすがに最後のエピローグ的なシーンへの展開は全く読めなかった。

うーん、良い話である。僕はあまり良い話は好きではないが、高校生が考えたのであればこれで良いではないか。後味の良い話である。

監督は城定秀夫。1本も観たことはないが名前に記憶はあった。調べてみたら、メジャーな作品は1本もないが、随分とキャリアがある。「どんなジャンルやお題でも傑作に仕上げる映画料理人的な天才職人監督」なのだそうである。

そういう監督で良かったんじゃないかな。素材の味がよく活きている。ちなみにパンフレットは売り切れており買えなかった。

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