『最低』
【6月14日 記】 『最低』を観た。Thanks Theater の2本目。今泉力哉監督、34分、2009年。
いやあ、何と言うか、超カワイイ女優の奥さんを持つ芸人が六本木ヒルズの多目的トイレで待ち合わせして、みたいな話が世間を賑わせているときに、こういう映画を観るとはまさに絶妙のタイミングであった(笑)
タイトルの意味するところはそういう最低の男である。この男を演じているのが芹澤興人だ。名前に記憶がない人でも、顔を見たら知っているはず。名は「たてと」と読むらしい。今回検索してみて初めて知った。
冒頭、DVDをかけかえる女性のシーンから始まる。その後は2人の男と3人の女が出てくるのだが、繋がりがさっぱり分からない。それが中盤で一気に繋がる。上手い脚本だ。そして、よくもまあ、こういう複雑な設定を思いついたもんだ。
要するに芹澤興人の複数の女性相手の浮気がばれて修羅場になる話なのだが、修羅場に至るまでのバツの悪さがとても良く出ている。
しかし、それにしてもこんな芹澤興人みたいな男がこんなにいろんな女性と交際できるのはおかしいという気もするし、いや、意外にそんなものかもという気もしてくる。
なんであれ、この映画は「最低」というタイトルとは裏腹に、実はあまり価値判断を下すことなく「好き」という気持ちのいろいろなありよう、バリエーションを描いているように見えてくるから不思議だ。
フツーの恋愛と、浮気(する側とされる側)、ストーカー、見返りのない一方的な愛、「別れてくれ」という男に「悪いけど私これからもあんたのこと好きだからね」という捨て台詞…。みんなただ「好き」なだけなのかもしれない。
そして、最後のめちゃくちゃ意味深な台詞。「あ、知ってたということなのか」と断ずるのは早計である。それをどう受け取るかで、多分観客の「好き」のあり方も違ってくるのだから。
短編だが、めちゃくちゃ面白かった。今泉力哉という人は非常によく人間を観察していると思う。
出演は他に天正彩、新井秀幸、川上望美、小宮一葉、小竹原晋、kia。撮影は村松英治。脚本は今泉力哉である。
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