『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』真船佳奈(書評)
【6月9日 記】 テレビ東京の AD の女の子が自分をネタにしたマンガを書いたという話は知っていた。が、僕も一応は同じ業界にいるわけであって、まあ、ある程度は知っている世界だろうと思って読まなかった。
僕は制作の現場を経験していないので、もちろん身を以て体験したわけではない。
ただ、門前の小僧としていろんなことを見聞きしているし、誰もいない真っ暗な会議室のドアを開けて電気をつけたら、いきなり並べた椅子の上から若い AD がモゾモゾっと起き出してきた、なんて光景はたまに目撃したりもするわけだ。
まあ、そういう話が書いてあるのだろうという想像はつく。テレビ東京の特殊性というものも当然あるだろうが、多分業界全体の共通性のほうが多いだろう。僕が読んでも多分「あるある」ネタはいっぱいあるだろうし、まあ、読まなくて良いかと思っていたのである。
なのに…
なんで、買っちゃって読んじゃったのか?──それが思い出せない。しかも、続編も一緒に買っているではないか!(笑)
ちなみに作中で作者は自分をものすごいブスみたいに書いているが、写真を拝見すると、絶世の美女ではないかもしれないが、個性的な顔立ちで、僕はむしろ可愛いと思う。こういう娘がブスブス言うとほんとのブスがひがむぞ、と心配になる。
そして、今、業界ではただでさえ AD 不足で、一説によると昨日まで道路工事現場で車の誘導のバイトをしてた少年でも翌日から AD になれると言われるくらいで、こんなに AD の悲惨な生活を描くとなおさら AD のなり手がないのではないかと、これまた心配になる。
で、心配で心配で笑えないかと言えばそうではない。そして、知っている話だと笑えないかと言えばそうでもない。
この人の基本的な姿勢であり、ギャグの正しいあり方を踏まえているのは、自分を茶化していること。そういう笑いである。
自分は恋愛からもファッションからも取り残されたおバカな AD なので、どうぞ笑ってくださいというスタンスなのである。あっぱれである。だから誰もが読んで笑えるのだ。
しかし、ああ、面白かった──と、ただそれだけの本だ。間違っても就職活動の参考書としてこのマンガを読んだりしてはいけない。お願いだから、それだけはしないでね(笑)
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