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Wednesday, June 17, 2020

『ただいま、ジャクリーン』

【6月16日 記】 『ただいま、ジャクリーン』を観た。Thanks Theater の最後、4本目。大九明子監督、40分、2013年。

僕は大九明子監督の映画も結構見ている。

  • 『恋するマドリ』
  • 『モンスター』
  • 『でーれーガールズ』
  • 『勝手にふるえてろ』
  • 『美人が婚活してみたら』

と、熊澤尚人監督の7本よりは少ないが、こちらは全て劇場で見ている。

この映画は『モンスター』の直後に撮られたようだ。この映画も『火星の人』と同じく「製作 映画美学校」のクレジットがついている。

冒頭は深い森のシーンである。木が生い茂り、時々木漏れ日が揺れる。でも、何を撮りたいのか、何を観客に見せようとしているのかが分からない。

そのうちに画面の中央部に何やら白いものがあるのが判る。どうやら小さな台に白い布を被せた、簡易の祭壇のようなものだ。そして、何人かの人たちがそこにお参りに来ている。

カメラが寄ると、そこはバス転落事故の現場であったことが判る。そこにお参りにきたのは悟と恵美(めぐみ)。ともに就学前ぐらいの年齢か。2人ともそのバスに乗っていて、同乗していた両親は死に、2人は孤児になった。2人の横にいるのは現在彼らが暮らす施設「チャップリンの家」で働く女性たちだ。

そこで悟は不意に、木の枝の上に人形が引っかかっているのを見つけ、施設に持ち帰る。それはジャクリーンと名前が書かれた腹話術の人形だった。同じバスに乗っていて亡くなった若い女性腹話術師の人形であることが、後に施設を訪ねてきた腹話術師(いっこく堂)によって判る。

腹話術師は人形を取りに来たのだが、2人の気持ちを察して、ジャクリーンに「ここにいたい」と言わせ、静かに去って行く。悟は来る日も来る日もジャクリーンをそばに置いて、たまに腹話術の真似事をしてみるようになる。

時代は飛んで、大人になった悟と恵美を演じているのが染谷将太と趣里である。今からするとものすごく豪華なキャストだ。まあ、染谷のほうは『ヒミズ』の翌年なので、そろそろ売れ始めてきた頃だとは思うが。

2人が育った施設の職員のひとりが体を壊して弱っているらしい。施設恒例の「喜劇王まつり」のイベントが行われるので、久しぶりに悟の腹話術を披露して彼女を元気づけてほしいと、悟は恵美から頼まれる。

あまり起伏のない筋だ。どういう経緯でこの映画が撮られたのかは知らないが、こんな地味な作品ではでは商業的にはしんどいだろうと心配になる。

でも、良い話だ。染谷将太と趣里の2人が映画を引き締めている気がする。

人形のジャクリーンが恵美のことを何度も「キラキラした目」と称する(声は夏目凛子)ところがうまく趣里を形容していた。台詞とキャストのどちらが先だったのか知りたいところである。

脚本は村越繁。この人が映画美学校の卒業生で、この映画はひょっとしたら在学中の作品で、その後『シドニアの騎士』や『賭ケグルイ』などのアニメの脚本家になっているようだ。撮影は大沢佳子と佐藤康祐。

これまでの大九さんの映画とは随分作風が違う感じはする。『モンスター』の次がこの映画だというのが凄い(笑) それから、いつもの如何にも女性らしい視点のカットが今回は見当たらなかった気がする。

でも、これはきっと『恋するマドリ』から『勝手にふるえてろ』に至るまでの、何かを埋める作品だったのだと思う。

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