YouTube『きょうのできごと a day in the home』
【5月19日 記】 昨夜、行定勲監督の『きょうのできごと a day in the home』を観た。2004年公開の映画『きょうのできごと a day on the planet』ではない。そのタイトルをもじった 40分強の中編作品で、4/24 から YouTube で公開されている。
ちなみに in the home という表現には違和感がある。at home か in the house ではないか?(笑) いずれにしてもこのタイトルは昨今のコロナ禍による外出自粛を踏まえたものだ。
だから、当然“三密”を避けた撮影をしており、5人の青年たち(最後は6人になる)が zoom飲み会をしている設定だ。場面はそこから変わらない。それぞれの俳優の zoom画面のワンショット×5~6のワイプ合成になっている。
こういう状況になってこういう手法のドラマが随分増えてきた。
例えば『カメラを止めるな! リモート大作戦』や『12人の優しい日本人を読む会』、『今だから、新作ドラマ作ってみました』といろいろ観てきて、やっぱり力量とセンスのある人が撮ると、どんな障害や制約があってもそれなりに面白いものが撮れるのだという実感だった。
『今だから、新作ドラマ作ってみました』の第1話は zoomっぽく、自撮りっぽくしようとして失敗した例だと思うが、さすがに森下佳子や行定勲は違うな、という感じ。
この『きょうのできごと a day in the home』はずっと zoom画面なのに、絵変わりがあって面白い。
カメラが寄ったり引いたりする代わりに、出演者が自分から固定カメラに寄ったり引いたり、あるいは斜に構えたり、挙句の果てにフレームアウトして無人の部屋が映っていたりする。
キャストは柄本佑、高良健吾、永山絢斗、アフロ(MOROHA)、浅香航大、有村架純の6人。脚本は行定監督の盟友とも言える伊藤ちひろと行定勲の共作だ。
どこからどう観ても飲みながら雑談しているとしか見えないのだが、アドリブはほとんどなく全て台詞だと言うから驚いた。それほど役者たちが巧いということでもある。zoom の具合で本当に聞き取りにくかった時には、アドリブで聞き返しているのだが、そういう細かい工夫がリアリティを増している。
6人は、学年は少しずつ違うが同じ高校の卒業生らしい。映画の話から女の話(最初は有村除きの男ばかり5人だったので)と四方山話が続き、途中で飲み物を取りに画面奥の冷蔵庫のほうに行ってしまう奴、トイレに立っていなくなる奴もいる。
冒頭は5人の校歌斉唱(?)で始まったり、誰かが話してる途中で別の誰かがチャチャ入れたり、本気で怒って「今目の前にいたら殴ってやる」みたいなことになったり、ほんとに雑談ベースなのになんだか面白い。
重苦しくてとりとめもなく退屈な日常を綴った『きょうのできごと a day on the planet』をついつい思い出してしまって、これもそんな映画かと思って見始めたのだが、こちらはちゃんと仕掛けがあって、40分の枠に収まるくっきりとしたストーリーがある。良い脚本だ。
そして、それが最後にきっちり今の外出自粛と結び付けられていて、いやあ、これは大変面白かった。
一応画面をエンベッドしておくが、できれば YouTube の大きな画面で観られたほうが良いかと思う。
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