いや、憶えてません(笑)
【5月28日 記】 「君が憶えていないのであれば、多分僕が勘違いしているんだろう」みたいなことを言われて少し驚いた。そう言えば、そういうことで時々驚く。どうも僕はそういうイメージで捉えられることが多いようだ。
僕自身はいろんなことをよく忘れてしまうほうだと思っている。年を取ったからではなく、小学生のときからそういう傾向はあったと思う。
本を読んでも映画を観てもすぐに内容を忘れてしまうし、読んだことを忘れてもう一冊買ってしまった本とか、観たことを忘れて借りてきてしまった DVD などは日常茶飯の例である。
僕の周りでいろんなことを一番良く憶えているのは妻だと思う。
いついつにどこそこに行ったときに坂を上がった角にタバコ屋があって、そこに赤いチーフを巻かれたブルドッグが繋がれていた、みたいなことを彼女はよく言うのだが、僕は赤いチーフやブルドッグが思い出せないのではなくて、いつだったかそこに行ったことがあるということが思い出せないのである。
そういう話をすると、「でも、やまえーさんはそんなつまらないことは憶えていなくても、大事なことは全部憶えている」みたいなことを言われることがある。そう、今思い出した。昔部下だった女性にそんなことを言われたことがあった。
しかし、それも言いがかりである。よく仕事上必要な数字や日付などを空で言える人がいるが、僕はそういうのはからっきしダメで、全く頭に入らない。
そう言えば思い出した。新入社員のときに上司にかかってきた電話を取ったことがあって、ま、会社に入ったばかりの緊張もあったのだろうが、電話を切ったらどこの誰だったか全く思い出せず、「なんとか社のなんとかさんから電話がありました」とメモを書いて怒られたことがあった。
そういうときに抜け目なくメモを取れる新人でもなかった。
書くのは好きだ。書くと忘れてしまっても構わないのだ。1年もして読み返すと、もちろん鮮やかに記憶が甦るなんてこともたまにはあるが、むしろ他人の経験を読んでいるように新鮮なことがある。
僕のどういう側面が他人に僕が強記であるイメージを植え付けるのかはよく分からないし、それを突き止めようとも思わないが、ひとつだけ言えるのは、逆に、多分、この忘れる才能によって僕の人生は窮屈さを逃れて豊かなものになっているのではないかと思うのである。
多分この文章も何年後かに読んだら、「なるほど」と言いそうな気がする。
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