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Saturday, May 09, 2020

YouTube 『12人の優しい日本人を読む会』

【5月9日 記】 YouTube で『12人の優しい日本人を読む会』を観た。そもそもは生配信されたものだが、5月一杯はアーカイブされている。

これは、言うまでもなく、三谷幸喜・作、東京サンシャインボーイズの舞台であり、映画化もされたあの『12人の優しい日本人』を、コロナ禍のこのご時世に合わせて、zoom を使ってリモートで演じた、と言うか、読み合わせみたいなものである。

僕は舞台は観ていないが、中原俊監督の映画版は結婚した年に妻と2人で観た。めちゃくちゃ面白かった。「実は弁護士なんだ」と名乗る男に豊川悦司が扮していたのをよく憶えている。相島一之という名前はこの映画で憶えた。

この YouTube版では、4回の舞台と映画版にゆかりの出演者が、その多くはかつて演じた役柄で集まっている。──甲本雅裕、相島一之、小林隆、阿南健治、近藤芳正、梶原善、西村まさ彦、宮地雅子、野仲イサオ、小原雅人。多くはサンシャインボーイズの(元)劇団員である。

そして、今回はそこに吉田羊と妻鹿ありかが加わっている。映画と共通のキャストは相島と梶原。映画ではピザ屋の役だった近藤が今回は舞台でも演じた陪審員6号の役である。ほかに原作者の三谷幸喜も登場する(今回の演出は他の人だ)。

当たり前だがみんな年を取った。当時は新進気鋭の、どちらかと言えばアングラ系の役者だったのが、今はみんなテレビや映画でよく見る味のある脇役になった。

で、今回の企画は面白かったかと言えば、もちろん面白かった。しかし、それは本の出来が良いから、面白くて当然で、映画と比べればどうかと言えば、もちろん遥かに劣る。

YouTube の『カメラを止めるな! リモート大作戦』や NHK の『今だから、新作ドラマ作ってみました』を観たら解るように、1ショットの切り返しやワイプ合成だけという単調な構図だと、やっぱり飽きてしまうのである。

多くの役者が慣れない zoom で、恐らくはみんな自宅から参加しており(つまり背景はバラバラの壁やドアやカーテンで)、しかも、zoom にデフォルトで備わっている機能しか使っていない、と言うか、それ以外のノウハウもないので、まあ、悪しざまに言ってしまうと残念な画である。

バーチャル背景を使うという手もあったんだけどな。

そして、やはり慣れの問題なのだろうが、役者によって非常に間の悪いケースがある。普段の演技では決してそんなことはないのに。その辺が面白さを削いでしまうのはちょっと哀しい。

ただ、12人というのはこういうのにぴったりな人数で、16:9 の画面を 4×3 で分割すると 4:3 の画面が 12 できて見やすい。守衛やピザ屋が入ってくるなどした場合は 4×4分割にして13人を収め、エンディングでは分割を1つずつ減らして行く。

短期間で企画して生で配信しようとしたから仕方がないのだが、zoom のありものの機能だけを使って終わりにしたのは大変惜しいと思う。

例えば、席を変わろうなどと言い出す場面では、zoom の画面割りを入れ替えるぐらいのことをしたほうが面白いし、誰かを指差すシーンでは、実際に相手がいると想定している方向を指すよりも、分割した画面が収まっている方向を指したほうが、観ているほうは面白い。

さらにもっともっといろんな視覚効果を施して加工すればもっともっと面白くなったと思う。この辺りのことについては、プロの優秀な放送技術マンが、そのうち既製品に頼らないいろんな手法や機材を作ってくれるのではないだろうか。

そうなるとこんな構図でももっと楽しめる作品になるはずだ。次はそういう形のものを観てみたいな。

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