突然ドーンと身体に出て来る
【4月16日 記】 今から思えば、若い頃はほんのちょっとしたことでビクビクしたり、くよくよしたり、ハラハラしたりしていた。
僕は昔から顔が能面とか埴輪とか言われるくらい表情に乏しいので、中には僕のことを「何があっても動じない男」みたいに思っている人もいたが、実は若い頃から、いや、幼少の砌からずっと、心の中では激しい嵐が吹き荒れていたのである(冗談でも誇張でもなく、如実な、いや切実な実感である)。
それが、会社に入って、いろいろ嫌なことや苦手なことをやらされて、それでもたまたま運が良くてポキンと折れてしまわず、結果的には鍛えられたわけで、次第に何が起きてもあたふたしなくなってきた。
いや、やっぱり、あたふたはするか(笑) でも、ビクビクとくよくよとハラハラは減ってきた。
それで自分では割合ストレスに強い人間に育ってきたような気でいたのだが、人生も後半になってっくると、それがある日突然、ドーンと身体に出て来るのである。
最初は2005年頃だったか、東京で単身赴任中に、時々左足が痺れるようになってきた。大きな病院で筋電図を取って診察を受けると、脳ではないだろうとのこと。脳なら足ではなく、脳に近い所、例えば顔に痺れが出るはず。脳でなければどこかと言えば神経だと言う。
それでくれた薬がビタミンB。僕もビタミンおたくを自称するくらいなので、ビタミンB群が神経に効くことぐらいは知っている。しかし、一方で、自分の生活習慣はそれほどビタミンB不足になるものとも思えない。ストレスで壊れるということはあったかもしれないが、サプリで補ったりもしてきたし…。
だいいち、ビタミンBを呑んだくらいでこの痺れは取れるのか?
と思って暫く呑み続けると、不思議なことにこれが効くのである。なんであれ、それで痺れは治まった。
次が2014年から2015年にかけての約1年半。今度は味覚異常。全く味がないわけではなく、全体にものすごく薄く、特定の味を感じにくくなる。これ、今だったら間違いなく新型コロナウィルスを疑ったはずだが、あの頃はそんなものは影も形もなかった(なくて良かった、いや、ほんとに)。
で、専門医の検査を受けたところ、遠因は分からない。あるいはストレスだったのかもしれない。
ただ、直接の原因は亜鉛不足である。医者に行く前にいろいろ調べていたらそう書いてあったのだが、ふと指の爪に横紋がでているのに気づき、ネットで検索したら「原因は亜鉛不足」と出てきて驚いた。
この治療法は当然亜鉛を摂取するしかない。しかも、亜鉛は薬ではないので病院や処方箋薬局ではくれない。ドラッグストアの健康食品売り場に置いてあるのである。味覚障害以外にも例えば髪が早く伸びるなどいろいろ効能はあるらしく、商品には「若かった頃の男の活力を取り戻す!」などと遠回しに書いてあったりする。
しかし、亜鉛呑む以外に治療はないのかい? そもそもこれで本当に治るのかい? と思って呑んでいたら、症状は常に断続的に現れるので「治ったと思ったら治ってなかった」の繰り返しだったが、不思議なことにいつの間にか治った。
で、今度は先月、急に心臓が痛くなった。いわゆる狭心症である。心臓が痛くなると怖い。「あ、死ぬのかな?」と思ってしまう。が、今は便利な時代で、ネットで調べると何でも分かる。どうやらすぐに死ぬような病気ではなさそうだ。
痛くなったのが金曜の夜だったので、すぐには死なないということだけを心の支えに週末を過ごし、月曜日に医者に行った。
で、今月に入ってから心電図、心臓エコー、心臓CT などの検査を受けたのだが、その結果、心臓も血管も形状や機能に全く問題はないとのこと。
そもそも狭心症には2通りあって、ひとつは血管の一部が細くなって詰まり、心臓に血が届かなくなって起きるもの。細くなってはいても血が全く行っていないわけではないので、平静にしていると全く症状はなく、坂道や階段を駆け上ったりすると急に苦しくなると言う。
僕の場合はそれには全く当てはまらない。走ったからと言って痛くなるわけではない。ならば、もうひとつのパタンはと言えば、心臓に血液を供給する血管が「何らかの理由で」痙攣する、というもの。これは運動と関係なく痛くなる。
で、その原因はと言うと、まあ、医者としては「何らかの理由で」としか言えないようだが、例えばストレス、というようなこともあるらしい。
幸いなことにこれには非常によく効く薬があって、僕の場合も呑み始めてほどなく痛みが治まった。この薬を呑んでいる限りは痙攣は抑えられているので大丈夫。ただ、治ったと思って勝手に服薬を止めた途端に再発する人も多いと言う。
「要するに一生呑み続けろということですか?」と訊いたら、「そのほうが良いでしょう」との答え。
まあ、歳を取るってそんなことなのかなあ、と思う。いちいちビクビク、おどおどしていると暮らしにくいので、うまい具合にそれを避けられるようになっては来たとは言え、だからと言って自分はそんなに強い人間ではないのだということだ。
ま、病気自慢でもしながら、そして毎日薬も呑みながら、おおらかに生きて行きたいものである(笑)
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