« 遅咲きの国の ALiS | Main | バトラー対コレクター(Pokémon GO と嗜好) »

Sunday, March 15, 2020

映画『星屑の町』

【3月15日 記】 映画『星屑の町』を観てきた。

僕は映画鑑賞の記録をつけるときに助監督の名前も記しているので、杉山泰一という名前には随分昔から馴染みがある。ずっと森田芳光監督の助監督を務めていた人だ。

その彼が『の・ようなもの のようなもの』で監督デビューしたのが2016年。彼の監督作を観るのはそれ以来である。

一方、主演の(クレジット上では主演らしい扱いになっていないが)のんは、まだ能年玲奈だった時代に僕は映画『グッモーエビアン!』で見初めて、「能年玲奈の次の出演映画も、是非見てみたい気がする」と書いているが、あれが 2013年の正月。NHK『あまちゃん』で大ブレークしたのが同じ年の4月だった。

あのときはまだ19歳、今は26歳か! 俗な言い方だけれど、いい女になったもんだ。

このドラマは売れないムード歌謡のグループ“山田修とハローナイツ”の話で、リーダーの山田修が小宮孝泰、リード・ボーカルの天野が太平サブロー、山田と同じく後ろで♪ワワワワーと言ってるだけのコーラスが市村(ラサール石井)、込山(渡辺哲)、西(でんでん)、青木(有薗芳記)で、他に一緒に旅回りをしている女性ボーカル・キティ岩城に戸田恵子が扮している。

よくもまあこんなメンバーを集めたなあとにやけながら見ていたのだが、終わってからパンフを読んでみると、なんとこの原作は水谷龍二の脚本・演出で25年も続いている芝居なのだそうだ。

そして、その芝居のメンバーがそのままこの映画に結集している。脚本も水谷龍二だ。メンバーの個性が見事に生きた脚本なので当て書きなのかなあと思ったのだが、舞台からそのまま持ってきているから、これだけ人物が出来上がっているわけである。

で、この芝居はご当地ソングよろしく、あるいは寅さんみたいに、毎回舞台を変えながら第7作まで上演されてきたそうで、今回監督の杉山泰一はその初演から観ていたという。この息の合った感じはそんなところから来ているようだ。

そして、映画化に当たって採用したのは第1作で、そこにも登場した岩手県久慈市在住の歌手志望の女の子・久間部愛の役を今回はのんにあてがっている。そして、グループのリーダー山田修の実弟・英二役の菅原大吉もまた舞台初演からのメンバーなのだそうだ。

で、これは昭和歌謡の映画なのである。いわゆるムード歌謡を持ってきたのは大正解だと思う。このジャンルは演歌ほど日本古来の怨念っぽくなく、J-POP ほど垢抜けてもおらず、日本と西洋のほどよいミックス感がある。

そして、この映画でもまさにそうなのだが、このジャンルはそのまま地続きにドゥワップやアメリカンポップスに繋がって行けるのである。

作中で歌われる歌の選曲が絶妙である。レコードの売上上位から選ぶような野暮はせず、しっかりとセンスを見せつけた真似のできない選曲になっている。

ハローナイツが歌う『宗右衛門町ブルース』(平和勝次とダークホース)は定番としても、島倉千代子のレパートリーから『ほんきかしら』を、内山田洋とクール・ファイブのヒット曲から『さようならの彼方へ』を引いてきた感覚は誰にも真似できないだろう。

キティ岩城のショー部分でも由紀さおりの『手紙』、加藤登紀子の『愛のくらし』という渋い選曲が聴ける。

そして、のんが初めて歌うのが藤圭子の『新宿の女』。『女のブルース』でも『圭子の夢は夜ひらく』でも『京都から博多まで』でもなく、このデビュー曲を選んでいるのが素晴らしい。

愛&ハローナイツとしてデビューした後に歌うのがピンキーとキラーズの『恋の季節』。これもこのグループに相応しいコール&レスポンス形式のコーラスである。

そして、この舞台/映画のために作られたオリジナル曲『MISS YOU』、『シャボン玉』も絶品である。のんは決して歌がうまくないが、ノン・ビブラート方式(これはのん独特のビブラートという意味ではなくビブラートをかけないという意味)の素直な歌い方には好感を覚えた。

元々はレコード会社のムード歌謡担当社員だったとか、スナックの経営者だったとか、300万円貸してやったのと引き換えに無理やりメンバーになった元自衛隊員とか、全員のキャラが見事に措定できているので、話がどんどん転がって行く。

観客から笑い声が何度も漏れる。

可愛い子を見ると誰彼なく「歌手にしてやるから」という口説き文句を言ってしまう市村。メンバーの実力に不満で、独立しようかと考えている天野。歌手になりたいと同時に、自分の父親が誰なのか突き止めたい愛。

愛に惚れてひたすら愛の幸せを祈っているが、直接は何も言えない啓太(小日向星一、小日向文世の息子である)、その啓太の父で、愛の母親(相築あきこ)に惚れているのに息子と同じように何も言えない英二(菅原大吉)。

そんな面々が集まって、話はドタバタと展開して行く。愛をプラットホームに残して駅を離れて行く電車からのカットのなんと感慨深いことか。曖昧な終わり方もなかなか素敵だった。

こういう映画はとっても好き。心が暖かくなる気がした。

|

« 遅咲きの国の ALiS | Main | バトラー対コレクター(Pokémon GO と嗜好) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 遅咲きの国の ALiS | Main | バトラー対コレクター(Pokémon GO と嗜好) »