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Saturday, March 21, 2020

映画『Cats』

【3月21日 記】 映画『Cats』を観てきた。

ミュージカル『Cats』を初めて観たのは1983年12月10日(日)、新宿西口のキャッツ・シアターでの劇団四季創立30周年記念公演だった。その後、劇団四季のミュージカルは何度か観ているが悉くがっかりさせられた。

今日まで観た四季の公演でがっかりしなかったのは、生まれて初めて観た『エクウス』(1978年3月4日(土)サンケイホール)だけで、これは市村正親がまだ若手だった頃の公演で、ミュージカルではなかった。

四季のミュージカルが何故そんなに肩透かしかと言うと、歌やダンスがどれだけ素晴らしくとも、ストーリーがあまりにつまらないからである。彼らも当然世界の名作ミュージカルを選んで上演しているわけだから、あくまでミュージカルというものは圧倒的な歌唱力とダンス・パフォーマンスで魅せるものであって、所詮いずれのストーリーもチャチなのかもしれない。

ところが今回は根本的に違う。それはカメラが入るからだ。

観劇というのは観客席からの定点観測だが、カメラが入ることによって、その視点は縦横無尽に動かすことができる。あたかも観客が上手から下手まで走りながら観るみたいに。

横移動だけではない。視点は上にも下にも、人間の身長の限度を超えて動かすことができる。それどころか真上からの映像も、真下からの映像も可能になる。

そして、圧巻はまさに踊っている最中のダンサーたちの内側に入って行けることだ。入っていって、動いているダンサーを上から下から横から斜めから、カメラ自身も動きながらダンサーのダイナミックな動きを捉えることができる。

それどころか、舞台という場所の制約がないから、場面によっては劇場の外へ出て100mぐらい後退し、劇場の屋根も壁も爆破しないと見えないような、思いっきり引いた構図の素晴らしい画も見られる。

そんな画期的な映像の予告編を見て、僕も妻もいっぺんに観たくなった。そして、アメリカ本国ではめちゃくちゃに酷評されているというニュースを聞いて、これは何が何でも観ないわけには行かなくなった。

夫婦の都合がうまく合わなくて今日になってしまったのだが、ようやく観ることができて夫婦揃って大満足である。めちゃくちゃ面白かった。舞台では絶対に得られない感動である。映像にしかできないことをやっているところが映画作りにおいて一番褒めるべきどころだと僕は思っている。

四季の舞台の『キャッツ』とは比較にならないくらい面白かった。同じトム・フーパー監督の『レ・ミゼラブル』なんかより格段に素晴らしかった。

一体この映画の良さが解らず、しかも酷評するようなアメリカの唐変木、野暮天どもはどんな目をしているのだろう。そんな目ならナイフでくり抜いて棄ててしまったほうがマシだと思うくらいだ。アホか、お前ら!

ヴィクトリアに扮したフランチェスカ・ヘイワードの何というしなやかな、セクシーで、いかにも猫らしい動き! そして、心がキュンと締まるほどの可愛さ! 彼女だけでなく、猫たちのあの微妙に動く耳と大きく跳ね回る尾は一体どういうメカニズムで動かしているんだろう。

猫の特殊メイクでよく判らなかったが、パンフレットを読むと、ジェニファー・ハドソン、イアン・マッケラン、テイラー・スウィフト、ジュディ・デンチ(彼女だけは最初から分かった)など、音楽界/演劇界を挙げてのかなりの効果キャストではないか。

ともかく歌もダンスも劇団四季の比ではない。その1024倍ぐらいは素晴らしい。特に厚みのあるコーラスワークが観客を魅了する。

ともかくこれは圧倒的な映像芸術である。これだけのカメラとパフォーマンスがあれば、筋の単純さは吹っ飛んでしまう。今日は心の底から満足した。

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