SONGS & FRIENDS 佐野元春 Café Bohemia
【2月8日 記】 新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS の第3弾、佐野元春 Café Bohemia に行ってきた。
武部聡志のプロデュースによる、往年の名盤をもう少し下の世代のミュージシャンに引き継いでもらって後世に伝えて行こうとする企画である。
第1弾が荒井由実の『ひこうき雲』、第2弾が小坂忠の『HORO』と来て、第3弾が佐野元春の『Café Bohemia』とは、少し意表を突かれた感はあるが、しかし、このアルバムがとんでもない名盤であることは間違いがない。
佐野元春は、デビュー間もない頃こそ、ブルース・スプリングスティーンの亜流みたいな捉え方をする人もいたが、その音楽的指向と冒険心の幅は広く、新しくアルバムを出すごとに、スカやレゲエなどの新しいリズムを取り入れ、誰よりも早く(ではなかったかもしれないが、少なくとも誰よりも効果的に)ラップやヒップホップの要素を取り入れたりしていた。
このアルバムは、言わばそういう“1周目”が終わって“2周目”に入ったような感じの、第1円熟期とでも言うべきタイミングに発表されたものだ。ここでは昔と比べてジャズっぽいアレンジが多い。何しろ、ドゥワップからヒップホップまでやる人なのだ。懐は深い。
「完璧」という形容をしたくなる素晴らしいアレンジ。パーカッションからブラス・セクションまでの大編成で分厚い音を作り上げ、フィルインのひとつひとつまで見事に有機的に機能していて、多彩なリズムを織り込んで変化を連続的に生み出し、カッコいいハーモニーが僕らをあの夜の向こうに突き抜けさせてくれる。
──都市の詩人とも言うべき彼のことばのキレ。
間違いなく彼は、僕の人生がしんどかった時、危うかった時に、僕を救ってくれた人のひとりである。
『HORO』の時は冒頭から小坂忠が舞台にいたが、今回の佐野元春は9組のゲスト・ミュージシャンたちの演奏が終わってから出てきた。
今回のステージで歌われたのは、もちろん『Café Bohemia』収録曲が中心だが、ゲスト・ミュージシャンの多くは1曲を『Café Bohemia』から、もう1曲を他のアルバムから選んでいた(この選曲は佐野元春の“指図”だと、誰かが言っていたが)。
最後に佐野元春が出てきて、彼も『Café Bohemia』から何曲かと、それ以外のものも何曲かやった。
アンコールの最後は『約束の橋』だった。
とても良い夜だった。
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