『5Gでビジネスはどう変わるのか』クロサカタツヤ(書評)
【1月6日 記】 マルチスクリーン型放送研究会の合同部会で講演を聴くまでは、僕はこの本のことも著者も知らなかった。でも、この講演を聴きに来た人のうちの一定割合は既にこの本を読んだ上で興味を持って聴きに来ていたようだ。
クロサカタツヤさんは所謂コンサル系の人なので、僕は最初警戒したと言うか見くびっていたと言うか、そんな感じだった。
あるじゃないですか、典型的なコンサル系講師の「この、コンサル野郎がっ!」みたいな、実務を知らずに机上の空論を振り回すけったくそ悪い感じ(笑)
でも、いざ語り始めると、そんな人では全くなかった。それが最初の驚き。
講演会終了後の懇親会で少し立ち話してみると、とても気さくで好奇心に溢れた感じの人で、僕と同じように twitter の黎明期に随分 twitter に嵌って twitter を楽しんだとの話を聞いて、なんだか和んで親近感が湧いた。
そういう人である。
で、話の内容はと言うと、「5G の説明で今までこんな解りやすい話聞いたことない!」という、これが2つめの驚き。
5G の説明と言えば大体が「5G には6つの特徴があり、その第一はウルトラ・ロー・レイテンシー・ナントカカントカで…」みたいな感じで技術が入口になるのだが、クロサカさんの説明は常に世の中が入口で、世の中から見たらどうなるかという視点がかなりはっきりしている。
だから、「こんな技術が来るぞ。どうするどうする? 油断してると取り残されるよ」みたいな脅しっぽい言い方にはならずに、全体に楽天的なトーンなのが良い。
とは言いながらも、いきなり広がって便利になるわけではないと、そのあたりは随分現実を見据えた説明になっている。黎明期の後に幻滅期が来るのだ。
これは有名なガートナーのハイプサイクルに基づく説明なのだが、僕はこの説明を聞いて初めて、このグラフはそんな風に理解すべきなのかと知った。
で、その講演の延長線上にあるのがこの本である。あるいはこの本をコンパクトにまとめたものがあの時の講演である。
だから、この本は同じように解りやすく、同じようにユーザ目線で、同じようにオプティミスティックな未来像を描いてくれる。
あの時の講演より少し長いので、読んでいて時々ダレる部分もあるが、言っていることは同じで、それは 5G の登場に際して、我々も(つまり、作り手も使い手も)意識を変えて行かなければならないということだ。
そういう明確なビジョンに支えられた状態で、あくまで全体を俯瞰する姿勢を貫いているから、この本はすんなりと頭に、心に入ってくるのである。
良書だと思う。
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