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Thursday, January 09, 2020

チーズtheater プロデュース公演『鈴虫のこえ、宵のホタル』

【1月9日 記】 久しぶりに芝居を観た。

『鈴虫のこえ、宵のホタル』。劇団チーズtheater プロデュース公演(下北沢OFF・OFFシアター)。

──つい先日までは聞いたこともなかった劇団の、知らない劇作家(花田朋子)による知らない演目である。

ただ、なんか面白そうだという勘が働いた。そう、こういうのはたいがい勘であり、一瞬のひらめきである。

思えば1970年代の終わりに(辰巳琢郎が入る前の)劇団そとばこまちに夢中になったのも、1980年代の半ばに劇団鳥獣戯画の虜になったのもそうだった。全部自分の勘で見つけてきたのだ。

それで今回のきっかけは何だったかと言えば、twitter だった。今回の出演者の一人である辻凪子さんにフォローされたのだ。

彼女が何を思って僕をフォローしてくれたのかは分からないが、それをきっかけに彼女の粒を読むと、これがかなり面白い。

関西人らしいサービス精神旺盛なイチビリぶりで笑いを誘いながら、演劇に対する真摯な思いも読み取れる。それで僕もフォローさせてもらった。

そしたら、この芝居の告知がやってきた。上述の通り知らない芝居である。でも OMS戯曲賞の佳作を獲ったと言うからには面白いはずだ。

ちなみに、OMS と聞いてすぐに「扇町ミュージアムスクエア」という固有名詞が出てくるのはある程度年配の大阪人の証である。

閑話休題。

交通事故で突然死んでしまった母のお通夜に3姉妹が帰ってきた。出てくる役者はこの3人だけ(長女・綾子=藤村聖子、次女・恵子=大浦千佳、三女・加奈=辻凪子)。全ての芝居が実家の居間で展開される。

通夜、葬式と言えば、親戚知人ら大勢が入り乱れるのが当たり前だが、その喧騒を逃れて3人だけになり、ついつい本音が吹き出してしまう、言わば儀礼の舞台裏みたいなところを描こうという着想は面白い。

「喧騒を逃れて」と書いたが、若い女の子3人ということもあり、また複雑な家庭環境もあり、それぞれにいろんな事情もあって、3人はしょっちゅう喧嘩になって、実はこちらのほうがやかましかったりする。

途中、ちょっと怒鳴りすぎではないかと思ったが、それは終盤の静かな夜のシーンに向けての対照もあっただろうし、東京のお客さん向けのサービスとして、やや誇張された関西人を演じてみたのかもしれない。

ただ、関西人はみんないつもあんな風にがなり立てているわけではないからね(笑)

オープニングのシーンでよく分からなかった部分が最後にしっかり繋がってくる。途中で入ってきた7年前の回想もきれいに繋がって、よく練られた本である。

常識をわきまえ我慢強い長女、ものぐさで奔放な次女、喜怒哀楽が激しく甘えん坊の三女──というキャラの描き分けははっきりしていたのだが、その割には3人の怒り方、キレ方にあまり差がなかったように見えた。そこはそれぞれの性格に合わせてもっと描き分けても良かったかな、と。

直情的なキレ方、ジメジメした恨み節、怒ってもすぐカラッと笑う、後を引いていつまでも落ち込む、ストレートな言いっぷり、強烈な皮肉、甲高い声、低い声、速射砲のような早口、ゆっくりしつこく恐ろしくーーなどなど、怒りの形でももっと3人の個性を突き詰めたらもっとメリハリが利いたのではなかろうか。

いずれにしても、結構身につまされる設定の中に、誰の記憶にもある“実家”の様子を見事に織り込んで、とても後口の良い芝居になっていた。

キャパ80席の小劇場だが、通路にパイプ椅子をどんどん追加して、最後は椅子がなくなったのか立ち見も2人出る大入りだった。

ここにいたみんなが、こんな冬の日に、畳と蚊取り線香の匂いをかぎながら、鈴虫の声を聞き、ホタルの舞うのを見たのではないだろうか。

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